【加害者向け】DVで問われる罪とは?
一般的に、DV(ドメスティックバイオレンス)と聞くと、婚姻関係にある男女以外にも、内縁関係にある男女や離婚した男女、同居しているカップルについてもDVは起こり得ます。
また男性から女性へのDVだけでなく、男性が被害を受けるケースもあります。
そして、暴力というと、殴る、蹴るを真っ先に思い浮かべるかと思いますが、こうした身体的暴力のみならず、言葉などによる精神的暴力、性行為を強要するなどの性的暴力、生活費を渡さないなどの経済的暴力も、DVにおける暴力に含まれます。
この記事では、DVをした人がどのような罪に問われるのか、逮捕されるとどうなるのかなどについて、簡単に解説します。 |
DV防止法と暴力行為
DV防止法とは、配偶者暴力防止法とも呼ばれ、正しくは配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律といいます。配偶者からの暴力の防止と被害者の保護を目的としています。
暴力の範囲
冒頭でも触れましたが、DV防止法における暴力には、身体的暴力のみならず、精神的暴力、性的暴力、経済的暴力があります。この他にも、外出を禁止するなど相手を支配する行為や子どもに暴力をふるう行為もDVにあたります。
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DVで問われる刑法上の罪
DVは、場合によっては、刑法上の罪に問われる可能性があります。最悪の場合、収入や家庭を失う場合もあり得ます。
暴行罪(刑法208条)
例えば、配偶者等に暴力をふるって、相手がケガをしなかった場合、暴行罪となります。この場合、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金、又は拘留若しくは科料に処せられます。
傷害罪(刑法204条)
例えば、配偶者等に暴力をふるった結果、相手がケガをした場合は、傷害罪になります。肉体的に傷害を負わせていなくても、PTSDなど精神的機能の障害を負わせた場合にも傷害罪になります(最高裁判所平成24年7月24日決定)。この場合、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます。
不同意性交等罪(刑法177条)
例えば、配偶者等が望まないのに、脅迫又は暴行によって性行為に及んだ場合、不同意性交等罪となり、5年以上の有期拘禁刑となります。
不同意性交等は、配偶者に対しては適用されないのではないかと思われる方もいるでしょうが、令和5年の刑法改正により、条文上「婚姻関係の有無にかかわらず」と明記されたため、配偶者間でも成立します。 |
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保護命令違反(DV防止法29条)
保護命令とは、DV被害者が配偶者や同居する恋人から身体に対する暴力を防ぐため、裁判所に申し立てることにより、裁判所から加害者に対し、被害者等へのつきまといなどをしてはならないことを命ずる命令をいいます。
保護命令には、被害者への接近禁止命令、被害者の子又は親族への接近禁止命令、被害者への電話等禁止命令、退去命令があります。
こうした保護命令に違反した場合は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。
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逮捕後の一般的な流れ
DVの通報により、警察が駆け付け、状況次第では現行犯逮捕の可能性も十分あります。また現行犯逮捕でなくても、被害者が被害届を出したなど、後日逮捕される通常逮捕の可能性もあります。
逮捕後は、警察での取調べ → 逮捕後48時間以内に検察官へ送致 → 送致後24時間以内に検察官による勾留請求 → 勾留決定となると10日間勾留(延長されると最長10日間) → 検察官による起訴不起訴の判断、となります。
不起訴となれば釈放となり前科はつきませんが(前歴はつきます。)、起訴された場合は刑事裁判を受けることになりますので、引き続き身柄拘束されます。 |
DVで逮捕されたら弁護士に相談を
DVで逮捕された場合、まずは弁護士に相談しましょう。DVが喧嘩の延長であって、その場の感情で通報された可能性も否定できません。
また逮捕されて、勾留決定がされるまで誰も面会できませんが、弁護士であれば面会が可能です。面会時に弁護士から取調べなどアドバイスを受けることもできます。
刑事事件とはあまり関係ありませんが、DVで逮捕されれば離婚に至るケースはよくあります。離婚した場合は、養育費や慰謝料などを請求されるおそれもあります。
ちなみに、刑事事件と家庭などに関する家事事件は別の手続となります。
したがいまして、刑事事件で対応した弁護士がそのまま家事事件も処理するとは限りませんので、注意が必要です。