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ペットと法律問題

今やペットは、家族の一員という存在になりましたが、その一方で、ペットが被害を受けたり、他方、ペットが通行人に噛みついて加害してしまったり、ペットに関連する法律問題は増えています。

 

日常生活の中でも、よくあるペットトラブルと対処法について、概括的にご紹介します。

 

  この記事のポイント
👉 よくあるペットトラブルがわかる
👉 ペットトラブルに関して、民事だけでなく、刑事責任を負う可能性がある

 

 

 

 

まず理解してほしいこと

ペットは法律上「物」

まず、法律上、ペットは「」です。「人」ではありません。したがって、ペットに問題が発生した場合は、「物」の問題として捉えます。

例えば、交通事故における物損事故の場合、損害賠償請求が認められたとしても、慰謝料が認められることはほぼありません。

 

よくあるトラブルは「人」の場合と変わらないこと

ペットは「物」とお伝えしましたが、トラブルの内容をみると、「人」におけるトラブルと違いはありません。

例えば、飼い犬を散歩中に、飼い犬が通行中の人に噛みついて、通行人がけがをした場合は、ペットではなく、飼い主が法的責任を負います。

また、動物病院やペットサービスでのトラブルがあれば医療や契約問題となります。ただ、ペットが死傷したとしても、「物」が壊れた扱いになりますが、慰謝料請求が認められることはほぼありません。

しかし、慰謝料が認められた希なケースもあります。

令和5年9月12日に、大阪地裁でペットサロンでのトリミング中に犬が死んだのは、はさみで喉を負傷したのが原因として、ペットサロン側に慰謝料など約40万円の賠償命令が認められました。この他にも、多くはありませんが、ペット問題において慰謝料請求が認められたケースはあります。

 

【参考】民法718条(動物の占有者等の責任

1.動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときには、この限りではない。

2.占有者に代わって動物を管理する者も、前項の責任を負う。

 

よくあるペットトラブルの具体例と対応の仕方

上記「理解してほしいこと」でも述べたように、ペットが被害に遭った、または他人をケガさせてしまった場合は、原則として占有者である飼い主が主体となって、責任に対応していくことになります。

主に犬を例としたよくあるペットトラブルと問われる責任を以下にまとめましたので、参考にしていただければと思います。

 

飼い犬が他人に噛みついた

もし飼い犬が人を噛んでケガをさせた場合は、飼い主が過失傷害罪(刑法209条)の責任を問われます(過失傷害罪は親告罪なので刑事告訴が必要です。)。この場合、30万円以下の罰金または科料に処せられます。

また、動物の占有者は、他人に加えた損害を賠償する責任を負いますので(民法718条)、刑事事件とは別に、民事訴訟で訴えを提起される可能性があります。

実際、当事務所でも他人のペットの犬に噛みつかれてしまった事例で訴訟にまで発展したケースがありましたが、噛みつかれた際の様々な事情を考慮して、占有者の責任の有無は判断されます。

(民法718条1項ただし書きの「相当の注意」とは、動物の種類及び性質に従い、通常払うべき程度の注意義務を意味し、異常な事態に対処し得べき程度の注意義務まで課したものではないとされています(最高裁判所昭和37年2月1日判決・民集16巻2号143頁)。

 

飼い犬が塀越しに吠えて、驚いた通行人がケガをした

上記同様、飼い主は、損害を賠償する責任を負いますが、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもって保管していたときは、損害賠償責任を負いません(民法718条)。

従いまして、例えば、塀に「猛犬注意」という看板をつけたり、犬小屋を道路から離すなどの措置を講じていたならば、相当の注意をしていたとして免責される余地はあり得ます。

 

飼い犬が、他人が飼う犬に噛まれてケガをした

犬同士といっても、大きさや力強さには個体差がありますので、犬同士の僅かなきっかけで、人と同様、喧嘩に発展し、大事故になることもあります。

この場合、法律上の「物」同士の扱いになりますので、刑事事件にはなりませんが、民事責任を問われる可能性があります。

訴訟になると、負った傷害の程度や動物の雌雄(性別)、噛み癖、過去の加害歴、年齢や占有者のしつけの程度や加害時の対応、被害誘発行為の有無などを踏まえ、総合的に責任の有無が判断されることになります。

 

交通事故によってペットまでもがケガをした

繰り返しになりますが、ペットは法律上「物」ですので、物損事故扱いになります。ただし、物であっても命であることは疑いようがないため、購入額や時価以上の治療費などが認められるケースもあります。

物損事故の場合、原則として慰謝料は発生しないというのが、法律の基本的な考えです。

交通事故によってペットが死亡した場合や重度の後遺症が残ったような場合は、慰謝料が認められた裁判例は先に述べたとおりです。

 

ペットをペットホテルやトリミングサロンで預かったら、ケガをさせてしまった

ホテルやサロン側は事故が発生した際には、直ちに飼い主に連絡すること、最低限の被害に抑えるよう対処するなど、誠意ある対応を行うことが求められます。

ちなみに、ペットホテルやトリミングサロンなど、一時的にペットを預けることを法律用語では、寄託契約といいます(民法657条)。

 

ペットショップから買ったペットが説明のなかった病気にり患しており、すぐに亡くなった

通常、販売業者は欠陥のない商品を販売する義務がありますので、購入時点ですでに病気にかかっていたことが分かった場合は、契約解除損害賠償請求を行うことになります。

また、購入時の売買契約書に「病気があっても責任を負わない」という契約条項があったとしても、消費者に一方的に不利な条項は消費者契約法によって無効となります。ペットショップは動物愛護法により登録制になっているため、契約前には健康状態などを書面で通知することになっています(動物愛護法21条の4など)。

このような場合は、獣医師の診断書を取得して、購入代金の返還や治療費等の支払いを求めることが検討されます。

 

ペットの医療過誤

動物病院が知っておくべきリスクとしては、一般的に、人が物を壊した場合に損害賠償義務を負うのと同様に、獣医療の過失によりペットを死亡させてしまった場合や健康を害してしまった場合には、善管注意義務違反として損害賠償請求を受けるリスクがあります。

 

野良猫に餌をあげたり、道端などに餌を放置する

野良猫に餌を与える行為自体は法律で禁止されていません。

しかし、動物に餌を与えた結果、騒音や悪臭などその地域の生活環境が損なわれた場合、都道府県から指導、勧告、命令がなされることがあります(動物愛護法25条)。そして、命令に従わなかったときは、50万円以下の罰金が科されます(同法46条の2)。

その他餌やりによって、生活環境に被害が生じた場合には、損害賠償請求を受ける可能性もあります。

 

フンの放置

法的な観点から言いますと、軽犯罪法1条27号の違反にあたる可能性があります。この場合、拘留又は科料に処せられます。かなり悪質性が高い場合などの場合は逮捕される可能性はありますが、一度だけなどの場合で逮捕されることは現実的には考えにくいです。

他にも、廃棄物処理法は、みだりに廃棄物を捨ててはならないと規定されており(産業廃棄物法16条)、廃棄物とは、ごみの他動物の死体その他の汚物とありますので、(同法2条)逮捕される可能性もあります。この場合、5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はこの両方に処せられます。

 

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ペットの所有者問題

よく、同棲中のカップルで飼い始めた犬の所有について相談を受けますが、基本的に所有権は実際にお金を払った人となります。ただし、カップル間の金銭事情や普段の世話をしていたのはどちらなのかといったことを考慮することになります。そのため交渉次第ではありますが、犬の所有者から相当な対価を支払って犬を引き取ることもできる可能性があります。

 

ペット不可の物件で飼育していることが発覚した

そもそもペット不可である理由は、主に近隣トラブルの防止や物件価値の下落防止が挙げられます。そのうえで、ペット不可の物件において、ペットを飼った場合は、大家さんからペットを飼うのをやめるよう言い渡されるか、退去を命じられるか、飼育の許可を得られるかのどれかになりますが、飼育の許可は滅多にないでしょう。退去を命じられた場合、原状回復費用がかなり高額になるケースもあります

 

ペット不可の物件であっても、一律にすべて禁止している物件もあれば、ハムスターなどの小動物であれば飼ってもよいとしているところもありますので、事前に契約書や重要事項説明書で確認するか、大家さんに相談するとよいでしょう。

 

 

動物への虐待行為

動物虐待とは、動物を不必要に苦しめる行為のことをいい、正当な理由なく動物を殺したり傷つけたりする積極的行為だけではなく、世話を怠ったり治療させずに放置したりするなどのネグレクト行為も含まれます。

動物愛護管理法では、こうした虐待や遺棄行為があった場合、懲役や罰金に処せられます。

愛護動物をみだりに殺したり、傷つけた者

5年以下の懲役又は500万円以下の罰金

愛護動物に対し、みだりに身体に外傷を生ずるおそれのある暴行を加える、又はそのおそれのある行為をさせる、餌や水を与えずに酷使する等により衰弱させるなど虐待を行った者

1年以下の懲役又は100万円以下の罰金

愛護動物を遺棄した者

1年以下の懲役又は100万円以下の罰金

 

動物虐待の疑いがある場合や虐待が行われていることに気付いた場合は、いち早く警察や自治体などに通報・相談しましょう。場合によっては刑事告訴も検討する必要がありますので、その際は当事務所までご相談ください。

 

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まとめ

ペットの家族化が進む中で、思わぬトラブルが発生する場合があります。

万が一、ペットに関連するトラブルでお悩みの方、動物病院等で客とのトラブルでお困りの方は、事案に応じて弁護士が必要となるケースもありますので、弁護士または警察に相談することをお勧めします。

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