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発信者情報開示請求における意見照会書が届くタイミング【弁護士が解説】

近年、SNSを中心にインターネット上の誹謗中傷やビットトレントなどのファイル共有ソフトでの著作権侵害を理由として、被害者から発信者情報開示請求がなされるケースが増加しています。

誹謗中傷をしてしまった人はこのような思いをした経験はありませんか。

・発信者情報開示請求をされると意見照会書が届くらしいが、一向に来ない。心配で夜も眠れない。

・どれくらい経てば、発信者情報開示請求されていないと考えていいのか。

・意見照会書が届いたが、どう回答してよいかわからない。

 

この記事では、発信者情報開示請求における意見照会書がいつ届くのか、届いた場合、その後どうなるのかについて、解説します。

 

法改正による発信者情報開示命令手続の創設

発信者情報開示請求は、プロバイダ責任制限法に基づいて行われます。

改正前は、サイト管理者等のコンテンツプロバイダに仮処分の申立てをし、開示されたIPアドレスから、発信者が契約している通信事業者などのアクセスプロバイダを特定し、アクセスプロバイダへ発信者情報開示を求める訴訟を提起する流れでした。

改正後は、上記2度の手続を踏まなければならない煩雑さなどを考慮して、新たな裁判手続として、発信者情報開示命令が創設されました。この手続は、発信者情報開示命令申立に伴い、コンテンツプロバイダが有するアクセスプロバイダ情報についても提供命令申立を行います。提供命令により得たアクセスプロバイダの情報により、アクセスプロバイダに対し、発信者情報開示命令申立を行い、同時にコンテンツプロバイダに通知します。通知を受けたコンテンツプロバイダが、アクセスプロバイダに対して、発信者情報を提供します。発信者情報開示命令が裁判所によって認められると、アクセスプロバイダを経由して、コンテンツプロバイダから発信者のIPアドレスや氏名住所の情報が開示されます。

 

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発信者情報開示請求における意見照会書はいつ届くのか

発信者情報開示請求がなされた場合、意見照会書はコンテンツプロバイダからとアクセスプロバイダから届く2つの場合があります(プロバイダによっては、メールの場合もあります。)。

意見照会書には、利用者や契約者の氏名、住所、電話番号、メールアドレスなどの情報を請求者に対して開示してよいかどうか回答することが求められます。

基本的には投稿日から2,3カ月程度で届くことが多いですが、どこかの過程で手続きが遅滞していた場合には権利侵害日から1年近く経過して意見照会書が届いたというご相談も稀にあります

 

コンテンツプロバイダからの場合

誹謗中傷や著作権侵害などネット上で権利侵害が起きた場合、被害者(請求者)はまずコンテンツプロバイダに対して、発信者情報開示を求めることになります。

しかし、コンテンツプロバイダは投稿者(発信者)の名前や住所を知らないため、請求者はスマホなどに割り振られているIPアドレスの開示を求め、それをもとにアクセスプロバイダへ発信者情報開示請求を行います。

そのため、コンテンツプロバイダから意見照会書が届いたということは、被害者(請求者)がアクセスプロバイダへ発信者情報開示請求を行う前段階ということになります。

 

アクセスプロバイダからの場合

被害者(請求者)はIPアドレスを把握したら、次にアクセスプロバイダへ発信者情報開示請求を行います。アクセスプロバイダは主に携帯会社が多いので、契約に係るあなたの氏名や住所などの情報を保有しています。

つまり、アクセスプロバイダから意見照会書が届いた場合、あなたの情報が開示される可能性が高まったということです。

 

意見照会書が届いたときの対応

意見照会書には、一般的に、あなたの個人情報を開示することに同意するかしないかの回答書が同封されています。

 

身に覚えがないとき

そのSNSに投稿した覚えがなかったり、トレントなどの共有ファイルソフトを利用したことがないなどの場合は、まずは家族に確認しましょう。家族が利用しているケースが多いです。

基本的にプロバイダは契約者情報に基づいて意見照会を行いますので、契約者は自分だが、投稿者は家族の誰かということはあり得ます。

少なくとも、意見照会書が届いたということは、自分の契約回線を利用して投稿がなされたことは間違いありませんので、自分ではないことを証明しない限り、客観的には自分が投稿したことになります。また自分ではないことの証明はかなりの困難となります。

ご自身で同意しないと回答することはできますが、プロバイダの判断で開示されることもあります。

 

権利侵害をしていない場合

投稿はしたが、権利侵害にあたるような投稿はしていない場合は、同意しないとして、権利侵害ではないことを法的に主張する必要があります。

権利侵害にあたるのかどうかの判断や法的主張に関しては弁護士でないと難しいです。

 

自分に非があることが明らかな場合

誹謗中傷をしたことが自分でわかっていたり、著作権侵害していると認識しているのであれば、同意し示談成立を目指すべきです。この場合も弁護士に相談して、対応してもらうのが得策です。

 

無視するべきではない

まず意見照会書が届いても何も回答しない、無視するというのは得策ではありません。無視した結果、あなたの個人情報が被害者に開示され、損害賠償請求や刑事告訴をされる可能性が極めて高いです。

 

回答期間はプロバイダによりますが、概ね7日から14日です。回答期間を過ぎると、開示に応じないと判断されます。もっとも、プロバイダに連絡すれば、少しですが回答期間を延ばしてくれます。

 

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発信者情報開示請求から開示までの期間

発信者情報開示請求から意見照会書があなたのところに届くまでは、裁判手続によりますので、一概には言えませんが、2~3か月で届く場合もあれば、1年後に届く場合もあります(但し、相手方はログ保存の申請をこの段階で済ませているので、ログ期限切れという事態にはなりません)。

そして、意見照会に回答してから開示されるまでの期間については、こちらも裁判手続によりますが、同意したときは概ね1か月程度で、同意しないまたは無視したときは概ね3か月から半年ほどで、プロバイダから請求者に開示されることになります。

 

意見照会書が届いたら弁護士に相談を

あなたに意見照会書が届いた場合、被害者は民事での損害賠償請求や、刑事での刑事告訴または被害届を検討していますので、意見照会書が届いたら弁護士に相談しましょう。

そのため、意見照会書で不同意で回答して争うこともできますが、心当たりがあるのであれば、裁判で争うよりも、示談で解決した方が最も早く解決できます。示談の内容で、民事裁判を起こさない、刑事で刑事告訴をしないという条件で示談成立を目指すことも可能です。

 

最後に

意見照会書が届いた場合、遅かれ早かれあなたの個人情報が開示される可能性は高まりつつあります。

意見照会書が突然届いてどう回答すべきかお困りの方はお気軽に当事務所までご相談ください。損害賠償請求訴訟や刑事告訴に至る前に、示談成立に向けて交渉いたします。また交渉次第ではありますが、生活や資力状況によっては減額できる場合もあります。一人で悩まず、早期解決に受けて、当事務所でアドバイスを受けてみてください。

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