建築トラブルは専門家に相談を
はじめに
通常、建築工事において、注文者が施工業者に、新築工事やリフォーム工事などを依頼した場合、工事完成後に注文者が施工業者に工事代金を支払います。
しかし、こうした一連の建築工事の流れにおいて、さまざまな紛争が発生することがあります。
例えば、
「新築の戸建てを購入したが、雨漏りや所々床が傾いている。」
「壁の色が注文した色とは違う色になっている。」
「契約時に聞いていなかった追加工事代金を請求された。」 など
このような建築・リフォームトラブルは、施主と施工業者との間で、認識の違いが生じることがほとんどです。
そして、建築紛争は、医療過誤と並んで専門性がかなり高い紛争です。建築トラブルが発生した場合、事案によっては長期化するケースもありますので、一般的には、弁護士、建築士、建築設備士といった専門家に相談する方が無難です。
また、専門家に相談せずに、裁判外紛争解決手続(ADR)を利用することも可能です。 |
よくある建築トラブル
契約不適合に関するトラブル
よくある建築トラブルで最も多いのが契約内容に適合していないとするトラブルです。
このような場合、原則として、売主が買主に対して、契約不適合として損害賠償責任を負う可能性があります。
工期の遅れ
天候などの影響により、建設工事の工期が遅れる場合があります。
一般的には、契約書に工期が遅れた場合に関して規定されていることがほとんどです。
ただし、工期が遅れた原因の全てが契約書で規定する原因にあてはまるとはいえません。
このような場合は、具体的事情や判例などを考慮して、人為的によるものなのか、天候などの不可抗力によるものなのか、判断するのが一般的です。
工事の中断
施工業者側の資金がショートしたなどの原因で、工事が中断することがあります。
このような場合は、施工業者側の資金繰りが改善されない限り、工事は行われません。
工事を続行するためには、工事を引き継いでくれる別の施工業者を探す必要があります。
工事代金の未払い
請負契約では、完成した目的物の引渡しと同時に報酬を支払わなければなりません(民法633条)。
しかし、時として、下請け業者と元請け業者といった関係の場合、先に完成した建物を引き渡してしまうことがあります。
このような場合は、一般的な債権回収の方法に沿って、実現することになります。 |
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合意のない追加または変更工事
工事を進めているうちに、新たに工事の必要性が出たり、施主の希望によって工事内容に変更が生じる場合があります。
追加工事は、もともと契約書に基づく工事代金よりも低い金額になることが多く、一々契約書を作成しないということは少なくありません。口頭でも成立するため、ある日施工業者から「壁だけでなく屋根もやっておきますか?」と聞かれ、「お願いします。」と答えるだけで、お互いの合意があったという事実が発生します。
なので、契約書がなくても、施工業者から、客観的にみて追加工事であること、施主の合意があったこと、金額(具体的な金額まで必要とされません。)の支払いについて施主から承諾を得ていたこと、が立証されれば、追加または変更工事代金を支払わなければいけない可能性があります。
そのため、施主、施工業者双方が、追加または変更工事の際には契約書を作成するよう心がけましょう。
相談までに準備しておいた方がよいもの
建築トラブルは、専門性が高いゆえに、より多くの情報が必要となります。そのため、専門家に相談する際には、できるだけ多くの資料があった方が相談はスムーズにいきます。
以下は、一般的な資料です。事案によっては他に資料が必要な場合もあります。
契約書
見積書
設計図
不具合などが分かる写真や動画
専門家などが調査した調査結果報告書
相手とのやり取りが分かるメール など
実際に相談する先は、住宅リフォーム・紛争処理支援センター、建築士会の建築相談、弁護士が一般的です。
建築トラブル解決のための手続
ADRの利用
ADRとは、裁判外紛争解決手続のことをいいます。裁判以外の紛争解決手続で、あっせん・調停・仲裁の3つの手続によって解決を図ります。
ADRのメリットは、ご自身で申立てを行うことが可能で、裁判よりも簡易、迅速で、費用も弁護士費用に比べると安いです。
ADRは主に話し合いによる解決を目指し、最終的には当事者の合意が必要です。相手が話し合いに応じない、または重大な欠陥があり賠償額が高額になるなどADRではなく裁判で解決すべきと判断された場合は、裁判を選択せざるを得ません。
建築に特化したADRは、各都道府県弁護士会による住宅紛争審査会、国土交通省と各都道府県に置かれる建設工事紛争審査会で行われていますので、検討してみてもよいと思います。 |
裁判
ADRでの解決が見込めない場合は、最後の手段として、建築訴訟を提起して裁判所で判断を求めます。
この場合、工事の瑕疵(平たく言えば法律上の欠点や欠陥)が問題となります。具体的には、設計、実際の施工、施工管理など事案に応じてさまざまな争点が考えられます。
また場合によっては、建築士による意見書を作成してもらうこともあり得ます。
そのため、建築訴訟における立証は、かなりの専門性が求められ、かつ細かい点まで主張及び立証していかなければいけませんので、弁護士に依頼することをお勧めします。
最後に
建築紛争は専門性のかなり高い訴訟分野です。
相談先として住宅リフォーム、建築士会による建築相談、法律事務所、また解決手段として交渉、ADR、訴訟があります。
建築トラブルになった際には、早めに専門家に相談されることをお勧めします。
早い段階から相談することで、事案に応じた適切なアドバイスを行うことができます。場合によっては訴訟を回避して交渉で解決することもできるかもしれません。
建築に関するトラブルでお悩みの方は、お気軽に当事務所までご相談ください。