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タンス預金をめぐる法律問題

Q 母が亡くなりました。遺品を整理していたところ、タンスから現金が見つかりました。 

相続人は、姉と私の2人だけです。姉と相談して、タンス預金は相続財産として含めないことにして、半分ずつ分配することにして、私は相続放棄をしようと思います。また姉が税務署への相続税申告する際には、タンス預金は計上せず、申告しようと思います。 

何か問題がありますでしょうか。 

 

A タンス預金は「相続財産」のため、相続財産として遺産分割の対象となります。 

そのため、相続財産に含めなくてはなりません。

遺言書がないのであれば、協議して半分ずつ分配することは問題ありませんが、後々の紛争を避けるためにも、書面に残しておく方がよいでしょう 

タンス預金は相続財産ですので、勝手に処分をしてしまうと、相続放棄が認められず、単純承認となる可能性があります 

相続税の申告に関しては、過少申告加算税など追徴課税となる場合があります。 

 

この記事では、タンス預金の扱いから、相続放棄や相続税との関係について、簡単にですがご紹介します。

 

タンス預金は相続財産に含まれる?

タンス預金とは、一般的に、亡くなられた方のタンスなどに保管している現金をいいます。 

現金は、遺産分割までの間は、相続開始時に存した現金を相続財産として保管している他の相続人に対して、自己の相続分に相当する金銭の支払いを求めることはできないとされています(最高裁平成4年4月10日判決)。 

つまり、現金を分割するためには、遺産分割を行う必要があります。遺言書があるのであれば、それに従うのが基本ですが、ないのであれば、相続人間で分割方法について協議(話し合い)します。 

協議によって分ける場合には、後々の紛争を避けるためにも、誰がどれくらいの金額を分配したのか、書面に残しておくことが望ましいです。 

 

   協議でもまとまらない場合は、家庭裁判所で遺産分割調停・審判の申立てをします。 

 

タンス預金を隠せばバレない? 

たまに、相続人の一人がタンス預金を独り占めしようと隠すケースがありますが、タンス預金は相続財産で、遺産分割の対象です。 

そのため、他の相続人には相続分に応じて受け取る権利を有します。 

相続財産を隠す行為は、他の相続人に対して損害を与える行為であり、場合によっては損害賠償義務といった民事責任だけでなく、横領窃盗といった刑事責任を負う可能性があります。 

遺産分割協議までの間に、ご自身がタンス預金を預かった場合は、隠すようなことはせず、また使い込むようなことは絶対にするべきではありません。 

 

相続放棄との関係 

タンス預金なら誰にも知られない、相続人間でも黙っていることにしたので、相続放棄をして、タンス預金の全部または一部を、受け取ってよいのか相談を受けることがあります。 

しかし、このような場合は、相続放棄は認められず、単純承認したことになる可能性があります 

相続放棄をした後、被相続人の相続財産を預かっている場合は、次の相続人となるべき人に相続財産の管理を引き継ぎます。 

次の相続人となるべき人がいない、つまり誰も相続する人がいないのであれば、裁判所に相続財産清算人選任の申立手続を行います。 

 

  決して、相続放棄をしたからといって、相続財産を処分してはなりません 

 

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相続税のお話 

少し法的な話からそれますが、相続税申告時に、現金としてタンス預金も計上すれば何も問題ありません。 

しかし、よくタンス預金だから相続税の申告の際、申告しなければ相続税の節税にもなり、税務署にバレないだろうと考える人がいます。 

結論から言えば、現金を含めずに申告したとしても、税務署に発覚する可能性は高いです。相続人の一人による申告であっても、共同相続人間で口裏を合わせての申告であっても、同じです。 

繰り返しになりますが、タンス預金であっても相続財産ですので、相続税の申告時には財産に含めなければいけません 

税務署には強い権限がありますので、相続開始から過去10年分の被相続人の預金口座について調べることができます。引き出しに見合った支出に見当がつかない場合、タンス預金の疑いをかけられて税務調査を受ける可能性があります。 

税務調査によって現金隠しが明らかとなれば、過少申告税加算税無申告加算税を受けることがあります。 

遺産分割をした後に、タンス預金が見つかった場合は、税務署に修正申告を行います。 

 

最後に 

相続財産は、預貯金、不動産、株式などを思い浮かべる人が多いと思いますが、タンス預金も相続財産です。 

相続財産として適切に処理しなければ、後々自らの責任を負われることもあります。 

タンス預金の扱い、遺産分割、相続放棄をした方がよいのか、などお困りの方は、お気軽に当事務所までご相談ください。 

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