留置場での生活はどうなの?差し入れについても解説
留置場での生活は、ご自身が逮捕されない、または身内や大切な方が逮捕されない限り、縁のない世界だと思います。
いざとなった時に知っておけば、何かと役に立つことがあるかもしれません。
留置場とは
留置場は、各都道府県の警察署内に設置されています。
逮捕された場合、まずこの留置場で身柄拘束を受けるのが一般的です。
警察署の中には留置場のフロアがあり、鉄の扉の奥に部屋がいくつかあり、逮捕された被疑者はその中の部屋で当面の間、生活することになります。
釈放前に留置場から出られるのは、取調べや引き当たり(犯行現場へ被疑者を車で連れて行って写真撮影や裏付け捜査をすること)等の場合にしか出られません。
なお、当然ですが男女は別々の留置場が用意されています。しかし、女性用の留置がある警察署は数としては少なく、東京23区内でいえば原宿警察署、東京湾岸警察署、警視庁本部西が丘分室の3箇所のみです。
23区外の多摩地域では、武蔵野警察署、警視庁本部多摩分室の2箇所のみとなっています。
したがって、どこの留置場にいるのかの情報がない場合、女性被疑者の場合には上記のいずれかの留置場におりますので探しやすいですが、男性被疑者の場合には基本的には各警察書に留置場があるため、逮捕時にきちんと刑事にどの警察署の所属か尋ねたり、刑事を通して家族に連絡してもらう際にきちんと留置先警察署名を伝えてもらうようにしましょう。
留置場での生活はどのような感じなのか?
一般的に、刑事事件の容疑をかけられて逮捕された場合、逮捕されてから3日間、裁判所による勾留決定後には勾留期間が最長20日間、なので最長23日間、留置場で身柄拘束を受けます。
この間は、留置場では行動が大きく制限され、すべて管理されます。
警察署にもよりますが、起床から食事、入浴、運動、就寝まで時間が定められており、規則正しい生活をします。
大体、入浴は週に1~3回程度(場所によっても異なりますが、夏場は回数が増える留置場も多いです。1回20分程度と時間も決められています。)、食事は3食で、昼食は食パン二枚とジャムとジュースとおかず程度と成人男性からすると全くおなか一杯になるものではありませんので、「自弁」といって手持ちのお金がある場合には、指定された中から出前注文が出来るのが通常です(お金はご家族からも差し入れすることが出来ます)。
平日は毎朝、「運動」の時間も設けられておりますが、「運動」とは名ばかりであり、実際には、その時間中に電動ひげ剃りと爪切りが貸し出されるので、皆ひげを剃ったり爪を切ったりしながら他の留置者や看守の警察官と雑談を行う時間となっています。
このように、基本的には、各警察署が定めたスケジュールに従って生活をし、その合間に警察の取調べを受けます。留置場でのスケジュールが優先されますので、例えば、面会に行って本人が留置場にいたとしても、この後警察の取調べが予定されている場合は、面会できない場合があります。検察調べや勾留質問の日には、バスで朝から夕方までずっと検察庁や裁判所に連れて行かれていますので、これらの日には接見に行っても本人は警察署にはいません。
なので、ご家族の方が接見(面会)に行く場合には、行く予定の日の午前中に警察署の留置係に電話を掛け、被疑者の当日の予定を尋ねて、何時くらいに行けば会えるかを確認してから接見に行ったほうが空振りがなく済む可能性があります(ただし、接見できるのは1日1組までですので、会社の方等ほかの方が先に接見していた場合には、その日はご家族であっても接見することができない点には注意が必要です。)
留置場の中では、担当さん(留置場にいる見張り担当の警察官)からは各自番号で呼ばれ、氏名を呼ばれることはありません。
部屋の中にトイレがあるため、プライバシーはほとんどなく、就寝時も完全消灯はされずに自殺防止のために照度を下げた照明が24時間ついているため、眠れないという方も多いです(そのため、自費で購入できる小さなタオルを目の上に載せて眠る方が多いようです。)。
また、市販薬の持ち込みも基本的に出来ませんが、風邪や胃痛などの場合には常備薬を出してもらうことができます。月に1、2回来る医者から処方してもらえば、睡眠導入剤や精神安定剤などの処方薬を出してもらうこともできます。
また、部屋は相部屋であり、混雑時には最大5、6人程度が同じ部屋で暮らす場合もあります。
大柄のイビキの大きい人が入ってきて、眠れないとのことで被疑者同士で喧嘩になったりすることもありますし、冬場には寒さを凌ぐためにホームレスの方が定期的に留置場に入ってきますので、体臭が原因で喧嘩になったり、ホームレスの方が数年ぶりに入浴すると風邪を引きやすいため、風邪を移された等の問題も冬場には訴えてくる依頼者の方もおりました。
他方、痴漢や盗撮などの比較的軽い犯罪で入ってきた初犯の方がロング(振り込め詐欺や重大事件で留置されており、数年は留置場にいることが見込まれている者)の被疑者からいじめられたりするという話も聞きます。
留置場では同部屋の人と雑談をして暇をつぶすことが多いですが、そこで氏名を聞かれたり、個人情報をあまり教えすぎると、社会に出た後になって脅迫されたり、犯罪に巻き込まれたりすることもあるため、弁護人として接見した際には被疑者の方にそのあたりも注意するようにしています。
決まったスケジュール以外の時間はどう過ごすのか?
起床から就寝、合間で取り調べを受けるとしても、暇な時間はあります。
身柄拘束中はスマートフォンなどは没収されていますので、この時間の過ごし方は、人によってさまざまですが、基本的には昼寝をするか、読書をして過ごす人が多いと聞きます(留置所内で小説や六法全書は借りて読むことが出来ますし、差入れとして本を入れることもできます)。
なので、差し入れをする際には、その人が好みそうな書籍(漫画や小説など)を差し入れしてあげると喜ばれると思います。
ただし、差し入れには冊数制限があり、中身もチェックされます(本の間に手紙を挟んでいたり、中のページにメッセージを書いていたりする場合があるためです)。
例えば、書籍であれば、クロスワードパズルは差入禁止とされている警察署がほとんどです(留置係の警察官に以前理由を尋ねたところ、解くと暗号メッセージになっていたケースがあり、県警からの通達で一斉に禁止されたという説明をされましたが、真偽は謎です。)
本の種類については、留置場では取調べがない日には、とにかく時間を持て余すため、分厚い漫画本(こち亀の特別号のようなもの)や、活字に抵抗のない方に限りますが一冊で完結する厚めの小説等が喜ばれることが多いです。
衣類であれば、自殺防止のためにセーターや長い靴下などは差し入れできず、靴下はくるぶしまでのものに限られています。また、スウェットなどのズボンも腰ひもは外さねばならず、腰ひもの入っていた穴は縫い合わせて閉じていないと差し入れできない扱いが通常です。
更には、下着(パンツ)も、ボタンがついているものはNGなどの細かな決まりがあります。
留置場にいる間はお金は不要?
留置場に入る際、所持金は持ち込むことができませんので、警察に預けることになります(これを留置金と言います。)。
留置期間には、自弁、切手、便箋、歯磨き粉などを買うことができますが、これら代金は留置金から差し引かれます。
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♦ 一般の方による面会・差入れには制限があります。 |
留置場への接見や差し入れでお困りの方は弁護士に相談を
弁護士以外の人が接見を希望する場合、逮捕されてから早くても4日目以降でなければ接見することができません。また、共犯事件で否認していたりする場合には接見禁止が付くことが多く、その場合には4日目以降も接見禁止が解除されないと接見することはできません。
弁護士であれば、このような制限なく、被疑者と面会することができます。
弁護士を通じて、被疑者の状況や情報収集を行うことができますので、差し入れのことも含めて逮捕された際には、すぐに弁護士に相談することをお勧めします。
被疑者に差し入れや面会をすることで、被疑者は気にかけてくれていることがわかるので、精神的な支えになると思います。