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【不動産シリーズ②】賃貸借契約をめぐるトラブル~賃借人の義務

前回は、賃貸者契約をめぐるトラブルのうち、賃借人の権利をご紹介しました。

今回は、賃借人が負わなければいけない義務の内容について、簡単にご紹介したいと思います。

賃料支払義務

毎月の賃料を支払うことが義務であることは想像つきやすいと思います。

一般的に、賃貸借契約は、賃貸人所有の物件を借りて使用する代わりに賃料を支払う契約です。そのため、賃借人は、毎月決まった期日までに賃料を支払わなければなりません

この義務を怠ると、大家さん(賃貸人)から出て行ってくれと言われる可能性があります(というよりほぼ言われます。)。

そして、一般的には、賃料を滞納した場合、賃借人は退去(明渡し)しなければなりません

実務上、こうした賃料の滞納と建物明渡しは密接に関連するトラブルとしてよく訴訟になります。

 

したがいまして、家賃が毎月いつまでに、どのような方法で(振込なのか持参なのか)、誰に(賃貸人なのか管理会社なのか)、支払うことになっているのか契約書を確認するようにしましょう。

 

通知義務

賃借人は、借りている物件が修繕を要するときは、賃貸人にその旨を通知しなければなりません(民法615条)。

この通知義務は、賃借人が通知しないことにより、賃貸人において、更なる損失を防止するためのものです。

賃借人において、賃貸物件を使用している中で、修繕が必要となったり、そもそも必要なのか判断に迷う場合には、迷わず賃貸人や管理会社に連絡してよいでしょう。

 

用法遵守義務

賃借人は、賃貸借契約によって定められた用法に従って、目的物を使用しなければならない義務があります(民法616条、594条1項)。

例えば、ペット飼育が禁止されているのに、ペットを飼うなどの禁止行為に違反しないようにしなければなりません。

用法遵守義務に違反し、大家さんから契約解除された場合は、部屋から退去しなければなりません。

 

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保存に必要な行為に対する受忍義務

建物は築年数が浅くても、日に日に劣化していきます。

ある日突然、雨漏りなどが発生することもあり得ます。賃借人にとっては、修繕請求権に基づいて雨漏りなどの修繕を請求することもできますが、事が起こる前に賃貸人が、目的物の保存に必要な行為(簡単に言いますと、建物の正常な状態を維持するために必要な手入れです。)をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことはできません(民法606条2項)。

例えば、雨漏りの修繕のほか、シロアリ駆除、ガス漏れ、漏水などの緊急性の高い場合などです。

 

原状回復義務

改正民法では、「賃借人は賃借物を受け取った後に生じた損傷について、原状回復義務を負うが、通常損耗や経年変化については原状回復義務を負わない」と明記されました(民法621条本文)。

原状回復の範囲は、賃借人が入居後に持ち込んだり、取り付けた物の撤去などの補修にかかる費用は、賃借人が入居時に支払った敷金から清算されるのが一般的です。

ただし、日焼けしたクロス、家具の設置跡がついた床などといった誰が住んでも普通に使用していれば生じる損耗(通常損耗、経年劣化)は、賃借人による原状回復の範囲には含まれません。

また通常損耗や経年劣化についても賃借人に原状回復義務負わせるという特約については、法改正により明記されていないものの、裁判例等で、特約の必要があること、特約内容が暴利的でないこと、賃借人が通常損耗や経年劣化についてまでも原状回復する義務があることを認識していることなどが必要とされています。契約書をよく確認するようにしましょう。なお国土交通省によるガイドラインも参考になりますので、ご参照ください。

 

賃貸借契約において、原状回復をめぐるトラブルはよくあります。トラブルとなった際には、弁護士に相談することをお勧めします。

当事務所ではこれまで原状回復をめぐるトラブルを多数扱った実績があります。交渉で解決したケースもあれば、訴訟で争ったケースもあります。いずれも損耗の程度や内容などによりますので、賃貸人から不当な原状回復請求をされてお困りの方は、お気軽に当事務所までご相談ください。

 

善管注意義務

上記複数の義務を包括する義務として、賃借人は、善管注意義務を負います(民法400条)。

借りている物件に備え付けられている設備を、借りている間は大切に使用しましょう、ということです。

例えば、水回りの清掃をしていないためにカビなど著しい汚れが発生した場合、壁に穴をあけて下地のボードを損傷させてしまった場合などは善管注意義務違反にあたる可能性があります。

善管注意義務に違反すると入居時に預けた敷金の返還に影響を及ぼすことがあります。

つまり、経年劣化や通常損耗については原則として賃貸人の負担ですが、善管注意義務違反によって借りている物件を破損また損耗させた場合は、基本的に賃借人の負担となります。

そして、一般的には、こうした清掃費用や補修費用は、敷金から賄われることがほとんどですので、退去時の敷金返金額が減ることになります。

 

善管注意義務は、契約書には記載されていることがほとんどです。また入居前には不動産会社とともに部屋の状態を確認しましょう。

 

最後に

今回は、賃貸物件における賃借人の義務について簡単にご紹介しました。

特に、原状回復は実務でもよくトラブルになるところです。

ご紹介した義務の具体的内容については、ケースバイケースによるところが大きいので、賃貸契約をめぐるトラブルでお困りの方は当事務所までご相談ください。

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