COLUMN

コラム

ビットトレントなどのファイル共有ソフトを利用した場合のリスクと対応

ここ数年、ビットトレントなどのファイル共有ソフトを利用したことで、プロバイダから意見照会書が突然届いたり、警察に逮捕されるケースが多く、当事務所でも多くの相談が寄せられています。

トレントの仕組みなどをよく知らないまま利用すると著作権侵害として民事で損害賠償請求を受けたり、刑事で逮捕されたり、法的責任を負う可能性があります。

 

この記事では、ビットトレントなどのファイル共有ソフトを利用して他人の著作権を侵害してしまった場合のリスクと対応について、簡単にご紹介します。

 

トレントとは?

高速で大容量のファイルをダウンロードできるツールです。

一般的に、インターネット上にある音楽や映像などのファイルは数えきれないほど多くあるサーバーに保存されています。それらファイルをダウンロードするという行為は、インターネットを介して、目的のファイルを保存しているサーバーにアクセスして、そのファイルをもらうことをいいます。逆に、アップロードするという行為は、サーバーにアクセスして、サーバー上にファイルを保存することをいいます。

しかし、トレントを利用すれば、サーバーを介さずに、PC端末同士でファイルのダウンロード・アップロードをすることができます。これをP2Pモデルと言います。

トレントを利用すると、大容量のため、一般的な方法ではダウンロード等できなかったファイルを高速にダウンロードすることができます。

端末同士でファイルのやり取りを行いますので、自分が持っているファイルを他の端末から要求されれば、それをアップロードします。このように端末ユーザーが協力し合うことでトレントは成り立っています。

ここで注意が必要なのは、トレントを利用したユーザーは、ダウンロードしたファイルを一定期間、知らないうちに、他の端末からの求めに応じてアップロードをしていることになる点です。

(ビットトレントなどでは、初期設定のまま利用すると、自動的に自分の保有するファイルを他者に共有(シード)するように設定されており、知らず知らずの間に著作権侵害を行っていることになってしまいます。)

なので、違法なものをダウンロードすれば処罰の対象となりますし、その違法なファイルをアップロードすれば著作権侵害になることになります。

 

トレントは違法?

このような仕組みのトレントは違法ではないか、という点ですが、結論から言いますと、トレントそのものは違法ではありません。

サーバーの中には、適法なファイルも存在するため、それらをダウンロード・アップロードする行為は何ら違法性が問われません。

 

しかし、トレントの仕組み自体は違法ではないにしろ、著作権者に無断で著作物をインターネット上にアップロードする行為は、著作権法上の公衆送信権(著作権法23条)を侵害する行為となります。

 

 【関連記事】 こちらもあわせて読みたい
♦ 著作権侵害にあたるケースと法的責任

♦ 著作権侵害で訴えたい(被害者の視点から)

 

トレントで違法行為をしてしまった場合のリスクと対応方法

発信者情報開示請求による氏名等の特定

通常、自分の著作権が侵害されていると主張する著作権者は、プロバイダに対して、氏名や住所の開示を求めます。

開示を受けたプロバイダは、違法アップロードした本人に開示してもよいか意見照会書を送付し、回答の同意を求めます。

意見照会書が届いたら、開示に不同意としてもかまいません。

ただし、不同意としても、プロバイダの任意の判断で開示する場合もありますし、裁判所が開示命令を出せば氏名住所の特定を免れることはできません

 

したがいまして、心当たりがあるのであれば、無視するのではなく、示談交渉にて解決するのを目指しましょう。

その際は、弁護士に相談することをお勧めします。

当事務所では、トレントを利用した著作権侵害事案について、意見照会書が届いたとして、過去多くのご依頼をいただいており、減額を目指しつつなるべく示談交渉で解決できるよう尽くしています。

意見照会書が突然届き対応に苦慮している方は、一人で悩まず、お気軽に当事務所までご相談ください。

 

 【関連記事】 こちらもあわせて読みたい
♦ BitTorrent(ビットトレント)を使用しており、プロバイダから意見照会書が届いた場合の対応方法

♦ 発信者情報開示請求における意見照会書が届くタイミング【弁護士が解説】

 

損害賠償請求を受ける

事案にもよりますが、一般的には、著作権侵害における損害額は、ダウンロード回数に著作権者が得られたであろう利益を乗じて算出されます(著作権法114条1項)。

したがいまして、一般論としては、ダウンロード回数が多ければ多いほど高額な損害賠償金の請求を受けることになります。

もっとも、単純に商品単価×ダウンロード回数とする権利者側のよく行ってくる算定手法によって出された金額(莫大な金額になります)がそのまま裁判となれば認められるわけではなく、争いようはあります。

 

著作権者から著作権侵害として損害賠償請求訴訟が提起された場合は、お一人で対応するよりも、専門的知識を有する弁護士に相談しましょう。

 

著作権侵害による刑事告訴(逮捕の可能性も)

民事のみならず、刑事責任を負う可能性もあります。

著作権者による刑事告訴を受理した警察が罪証隠滅逃亡の恐れがあると判断した場合は、逮捕される可能性もあります。逮捕された場合、最大23日間拘束されます。

その後、検察による起訴不起訴の判断を経て、起訴となれば刑事裁判となり、前科が付く可能性が高まります。

そして、裁判の結果、違法アップロードで有罪となれば10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはこの両方(著作権法119条1項)、違法ダウンロードで有罪となれば2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金またはこの両方(同条2項)が科せられます。

 

   逮捕された場合には、速やかに弁護士に相談しましょう。

 

まとめ

民事での損害賠償請求、刑事での刑事告訴(逮捕も含め)、いずれも発信者情報の開示によって、まずは氏名住所等の特定から始まるのが一般的です。

したがいまして、プロバイダから意見照会書が届いた時点で、すぐに弁護士に相談し、今後の対応についてアドバイスを受けることが重要です。

当事務所では、相談者の資力状況などを踏まえて、適切なアドバイスを致します。トレントを利用して、法的責任を問われるかもしれないのではないかとお悩みの方は、まずはご相談ください。

コラム一覧