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宥恕(ゆうじょ)文言の必要性

刑事事件において示談はとても重要

一般的に、示談とは、法的な争いで当事者同士の話し合いによって、合意により解決することをいいます。

ただし、刑事事件の場合、被害者は経済的または精神的損害を受けていることがほとんどで、示談が成立したからといって犯罪成立の事実は消滅しません。とはいえ、刑事事件における示談はとても重要になります。

検察官が起訴するか不起訴するか、裁判官が量刑を決めるにあたって、被害者の方と示談が成立しているかは、重要な考慮要素となります。

一般的に、容疑者は、警察に逮捕されてから、最長23日間は身柄拘束を受けます。

その間に、警察や検察官から取調べを受けますが、最終的に検察官が起訴するか不起訴にするかどうかを判断するにあたっては、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情状を考慮します(刑事訴訟法248条)。

このうち、犯人の性格、年齢、境遇、犯罪の軽重は誰によっても変わるものではありません。

不起訴処分を目指すためには、「情状」が重要となり、そのために示談が必要となるのです。

つまり、示談は、被害者が謝罪を受けたか、被害者が許す気持ちになっているか、被害弁償がなされているかといったことは、検察官が「情状」を考慮するうえで、重要なものとなります。

また起訴されて刑事裁判になった後で示談が成立した場合でも、刑が軽減される可能性があります。場合によっては執行猶予付き判決となることもあります。

 

やってしまったことは後悔しても過去には戻れないので、自らの犯罪行為をきちんと反省して、被害者に謝罪の意を示すことが重要です。

 

宥恕文言とは

示談書に「宥恕する。」、「寛大な処罰を求める。」、「刑事処分を求めない。」など、加害者への罰を軽減するよう求める文言が記載されることがあります。

被害者の謝罪と被害弁償をした結果、被害者が宥恕する意思表示をした場合には、被害感情が和らいだものと評価され、刑事処分にあたって加害者にとって有利な事情となります。

 

宥恕文言があった方が良い?

有利な事情となり得るのであれば、積極的に示談書に記載した方がよいのでしょうか。

この辺りの考えについては、弁護士によって変わりますが、忘れてはならないことは、刑事事件の被害者の中には、金銭賠償を受けても、被疑者または被告人を許すことができない人もいます。

宥恕は、平たく言えば、許すという意味ですので、被害者が意味を知った途端に、示談に応じないということも少なくありません。

その場合、宥恕文言を入れない示談成立を目指すことになります。

起訴される前に宥恕文言のある示談(および相応の示談金額の支払)が成立していれば不起訴になる可能性が高く、宥恕のない示談であっても、例えば初犯であったり、相応の示談金額を支払っていて被害者の受けた損害が実質的に填補されているなどの事情があれば不起訴になる可能性は高くなります。

つまり、宥恕のある示談の方が、被疑者にとって有利に働きやすいということになります。ただし、あくまでも働きやすいということなので、宥恕文言があれば必ず不起訴になる、刑が軽減されるというわけではありません。

 

したがいまして、宥恕のある示談であればより有利な事情として考慮される程度ですので、必ずしも示談書に記入しなくてもよいものではあります。

いずれにしろ、「宥恕」や「許す」の文言があるなしで刑事処分の結論が決定的に左右されるわけではありません。

 

示談成立を目指すため、早めのご相談を

これまで紹介しました通り、刑事事件における示談成立はとても重要となります。

身柄拘束を受けた後は、自らが被害者と示談交渉をすることは難しいでしょう。特に、性犯罪などの場合は、そもそも取り合ってくれないことがほとんどです。

このような場合は、逮捕されたらすぐに弁護士にご相談ください。

弁護士であれば、被害者と連絡を取り、示談成立に向けて早期に弁護活動を行うことができます。

その際、示談書に宥恕文言を入れるかどうかはケースバイケースですが、被害者から宥恕を得られなかったとしても、意味ある示談にするために弁護士による弁護活動は必要不可欠です。

 

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