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【不動産シリーズ⑤】相隣関係~塀を設置するときの注意点と費用について

Q 地震で隣地との境界上にあった塀が壊れました。新たに塀を作りたいのですが、勝手に設置してよいでしょうか。設置費用の負担はどうなりますか?

A 前提として、自分の敷地内であれば塀を設置することは自由です。

ただし、塀を設置することで隣家が恩恵を受けることもあれば、逆に隣家に対する日照を妨げる場合もあります。

では、隣家との境界線上に塀を設置すれば文句は言われないだろうと考えると思います。

民法上、このように境界線上に塀を設置すること(囲障設置権)、またその費用についての規定があります。

 

この記事では、境界線上に塀を設置するにあたっての注意点や費用負担について、簡単にご紹介します。

 

囲障設置権とは

民法上、所有者が異なる建物の間には、各所有者が塀などの囲障を設置することができ、設置費用は折半するとされています(民法225条)。これを囲障設置権といいます。

囲障設置権は、居住者の生活上のプライバシーを保護するためのものです。建物所有者はもちろん、借地人(土地の所有者ではなく、建物のみを借りている人)も認められます。

ただし、あくまで隣家所有者に塀の設置協力を求めることができるにとどまります

そして、隣家所有者との協議が調えば、等しい割合で費用を負担します(民法226条)。

勝手に塀を設置した後に隣家所有者に費用の半分を請求することは認められていません。

 

なお、仮に隣家が空き家であっても、所有者が不明だからといって、勝手に囲障を設置することはできません。まずは、隣家所有者を明らかにする必要があります。

 

協議が調わない場合は?

隣家所有者との話し合いがまとまらなかった、または設置を拒否した場合は、裁判所に対して、設置協力を求める訴えを提起することができます。

ただし、囲障の設置により隣家の権利を侵害するなど、囲障設置権の行使が権利濫用であると認められるような場合(日照や通風を妨げるなど)は、囲障設置権が認められないことがあります。

 

もちろん裁判手続によらずに、境界線上の設置は諦めて、自分の敷地内に囲障を設置することもできます。その場合であっても、隣地に対して配慮は必要になるでしょう。

 

まとめ

以上のお話は、境界線上に塀など囲障を設置する場合の対応についてです。

自分の敷地内に自分の費用で塀を設置する場合は自由にできますので、隣家所有者との話し合いや承諾は不要です。ただし、隣家の日照を妨げるような塀の設置は、権利濫用となる可能性がありますので、注意が必要です。

たかが塀を作るだけでも、お互いの利害が一致していることがポイントとなります。

当事者同士で協議して解決できれば問題ありませんが、場合によっては弁護士など第三者が介入した方がよいケースもあります。

そのような場合は、お気軽に当事務所までご相談ください。迅速かつ円満に解決できるように尽くします。

なお、そもそも境界がはっきりしないような場合は、測量士や土地家屋調査士の協力が必要となることがあります。

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