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「人質がどうなってもいいのか?!!」人質強要罪について

よくテレビドラマや小説などで、とある建物に犯人が立てこもり、外にいる警察に対して、「人質がどうなってもいいのか?!早く金を用意しろ!」と言っているシーンがあります。

実社会でも、バス、航空機、銀行、ネットカフェ、最近では郵便局といった場所で立てこもりのニュースを耳にします。

こうした立てこもりは、刑法上、どのような罪に問われるのでしょうか。

立てこもり行為だけで、パッと思いつくだけでも、逮捕監禁罪(刑法220条)、強要罪(刑法223条)といったところでしょうか。

しかし、これだけのことをやっておきながら、逮捕監禁罪の法定刑は3月以上7年以下の懲役強要罪の法定刑は3年以下の懲役となっています。万引きなどの窃盗罪の法定刑が10年以下の懲役または50万円以下の罰金ですので、どこかアンバランスな感じがします。

そこで、こうした人質を利用した強要行為については、「人質強要罪」として処罰されることになっています。同罪を規定する法律は、「人質による強要行為等の処罰に関する法律」です。

 

今回は、特別法である人質による強要行為等の処罰に関する法律について、簡単にご紹介します。ちなみに、この法律は1977年のいわゆるダッカ日航機ハイジャック事件を契機として成立した法律です。

 

人質による強要等

冒頭のシーンのように、人を逮捕し、又は監禁し、これを人質にして、第三者に対し、義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求した者は、6月以上10年以下の懲役となります(同法1条1項)。未遂罪も罰せられます(同条2項)。

→要求した時点で成立しますので、要求に対する第三者がどのような行為をしたかは関係ありません。

 

加重人質強要

立てこもりは一人によるものとは限りません。立てこもる場所によっては、複数人による場合もあり得ます。

2人以上が共同して、かつ、凶器を示して人を逮捕し、又は監禁した者が、これを人質にして、第三者に対し、義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求したときは、無期又は5年以上の懲役となります。

 

立てこもりの結果、人質を殺害してしまった場合は?

立てこもりをしている者が人質にしている人を殺害したときは、死刑又は無期懲役となります。

→有期懲役はないので、かなり重い罪といえます。

刑法上、強盗殺人罪や強盗致死罪は法定刑が同様に「死刑又は無期懲役」とされており、これと匹敵する重大犯罪とされています。

 

殺人罪(刑法199条)の法定刑は、死刑又は無期懲役若しくは5年以上の懲役です。

 

その他立てこもりによって成立し得る犯罪

以上は人質による強要行為等の処罰に関する法律に限った紹介です。

立てこもりによって成立する可能性がある犯罪としては、今回紹介した人質強要罪の他にも、建造物侵入罪シージャックの場合には艦船侵入罪(刑法130条)、傷害罪(刑法204条)、暴行罪(刑法208条)、銃刀法違反といったものがあります。

 

最後に

実社会において、人質強要罪で逮捕されるケースは多くはありませんが、立てこもり行為だけでも多くの犯罪が成立する可能性があります。

立てこもりの被害に遭う場合は稀かと思いますが、このような特別法も存在するということで今回はご紹介させていただきました。

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