【風俗営業における罰則①】風営法の遵守事項と公安委員会による処分
はじめに
風営法は、善良の風俗と正常な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止することを目的としています。
そのため、風営法は、風俗営業者に対し、一定の遵守事項と禁止行為を定めています。これら事項を違反した場合、違反内容によっては、刑事罰または行政処分、その両方を受ける可能性があります。
風営法における遵守事項
まずは、風営法における遵守事項としては、以下があります。
①構造及び設備の維持
②営業時間の制限
③照度の規制
④騒音及び振動の規制
⑤広告及び宣伝の規制
⑥料金の表示
⑦年少者の立入禁止の表示
⑧接客従業員に対する拘束的行為の規制 など
今回は、キャバクラやホストクラブなどの風俗営業を中心に、風営法における遵守事項のうち②営業時間の制限、⑥料金の表示、⑦年少者の立入禁止の表示について、またこれらに違反した場合の行政処分について簡単にご紹介したいと思います。 |
風営法上の遵守事項と違反した場合の行政処分など
まず風営法上、風俗営業者は、営業時間や料金の表示、年少者の立入禁止の表示などについて遵守しなければなりません。
遵守事項に違反した場合、直接に刑事罰は適用されず、まずは指示・営業停止・許可の取消しの行政処分を受けます。その後、営業停止・許可の取消しの行政処分に違反した場合に、刑事罰が適用されます。
営業時間の制限
営業時間は一律ではなく、業態によって異なり、風営法は、原則、午前0時から午前6時までの営業を禁止しています(風営法13条)。
いわゆる風俗営業の場合、営業時間は上記の原則通りです。
ただし、風営法は、深夜営業は原則禁止としつつも、各都道府県の実情に合わせて、特別の事情のある日、特別の事情のある地域として、各都道府県が条例を定めれば、営業時間の延長を認めるとしています。
東京都の場合、「特別の事情のある日」としては年末年始における東京都全域、「特別の事情のある地域」としては営業延長許容地域として条例で規定されており、毎日午前1時まで営業が可能とされています。
営業延長許容地域は、主に繁華街ですので、新宿区歌舞伎町一丁目と同二丁目、港区赤坂一丁目から七丁目、豊島区池袋一丁目から三丁目、渋谷区代々木一丁目から三丁目、同区恵比寿一丁目と四丁目、立川市曙町二丁目、町田市原町田一丁目から六丁目(五丁目は除く)などなどかなり広範囲です。いずれの地域も有名な歓楽街ですね。
違反した場合の行政処分について
営業時間に違反した場合の直接の刑事罰の規定はありませんので、まずは行政処分を受けることになります。具体的には、営業許可の取消し、営業停止、指示です。
どの行政処分を受けるかはケースバイケースですが、例えば初犯であれば指示処分(改善するよう指示すること)、初犯であっても悪質であれば営業停止(20日以上6月以下)となることが多いです。
指示処分に従わなかったり、何度も営業時間外に営業していることが認められたような場合は、許可の取消しとなります。
許可の取消しを受けると、以降5年間は許可の申請をすることができなくなります。 |
営業時間延長にあたっての必要な措置(迷惑防止措置・苦情の適切処理)
一般的に深夜は、多くの人が寝静まっている時間帯です。風営法は、その目的として、正常な風俗環境を保持することにありますので、営業時間の延長が許容されたとしても、法の目的を逸脱するようなことはしてはなりません。
そこで、風営法は、深夜に営業を行う場合には、「風俗営業者は、客が大声もしくは騒音を発し、又は酒に酔って粗野もしくは乱暴な言動をすることその他営業所の周辺において他人に迷惑を及ぼすようなことがないようにするために必要な措置を講じなければならない。」としています(風営法13条3項)。
→具体的な措置については、国家公安委員会が定める風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則27条で定められています。
さらに、迷惑防止措置以外にも、風俗営業者は、営業所ごとに、苦情の処理に関する帳簿を備え付け、必要な事項を記載するとともに、苦情の適切な処理に努めなければなりません(風営法13条4項)。これは努力義務ですが、必要な事項については、上記施行規則28条に規定があります。
このように営業時間について都道府県条例で延長が許されている場合もありますが、延長が許された場合は、迷惑防止措置や苦情の適切な処理を講じていく必要があります。 |
料金の表示
風俗営業者は、その営業に係る料金を客に見えやすいように表示しなければなりません(風営法17条)。
→具体的な表示方法は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則33条に定められていますが、要するに、メニュー表を客から見えるところに壁に掲示したり、テーブル席であればテーブルに備え付けておけば基本的には問題ありませんが、料金についても客観的に金額がいくらくらい掛かるかを客が把握できる程度に明確に表示しておかねばなりません。
東京都のぼったくり防止条例でも料金の表示に関する規定があります。 |
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違反した場合の行政処分について
行政処分(指示、営業停止)を受ける可能性がありますが、指示処分となることが多いです。
しかし、指示処分に従わなかった場合、その指示処分違反を処分事由として営業停止命令を受けることがあります。
年少者の立入禁止の表示
風俗営業者は、18歳未満の者がその営業所に立ち入ってはならない旨を営業所の入り口に表示しなければなりません(風営法18条)。表示というのは、例えば18歳未満の入店はお断りします。という感じの掲示を行うことです。
→風営法が少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止することを目的としているためです。
違反した場合の行政処分について
行政処分(指示、営業停止)を受ける可能性があり、指示処分となることが多いですが、悪質な場合には営業停止処分となった例も見られます。
指示処分に従わなかった場合、その指示処分違反を処分事由として営業停止命令を受けることがあります。
条例への委任
風営法では、都道府県の実情に合わせて必要に応じ条例で遵守事項を定めることを認めています(風営法21条)。
東京都の場合、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例7条で遵守事項が規定されています。
→そのため、風俗営業者は、風営法のほか、ご自分の経営する店舗の所在する各都道府県条例で定める遵守事項も必ず確認し、遵守しなければなりません。
風俗トラブルは弁護士にご相談を
風俗営業は、守らなければならない事項が多くあります。
特に、抜き打ちで遵守事項が守られているか、警察による定期的なチェックがあります。
あるいは私人警察官が客になりすまして、各事項を遵守できているかを確認することもあります。
日ごろから各事項は遵守するよう徹底し、指摘されたら誠実に対応することが望ましいです。
また遵守事項をきっかけとして、その他違反で逮捕に至る可能性もあります。もし風営法違反であるとして逮捕された場合は、速やかな弁護活動のためにも、お早めに当事務所までご相談ください。