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自分でできる支払督促の申立てと注意点

はじめに

債権回収の裁判上の手続として、支払督促の申立てがあります。

支払督促は、裁判所への出席が不要などのメリットがありますが、他方でデメリットや注意点もあります。

 

そこで、今回は支払督促を自分で申し立てる場合の注意点などについて簡単にご紹介します。

 

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支払督促の概要

支払督促とは、法廷で裁判期日を開くことなく、申立人が提出した申立書や証拠書類の郵送によって行われる手続です。

つまり、支払督促を申し立てて、債務者が任意で支払いに応じない場合は、強制執行をすることができます。

支払督促のメリットは、一言で言いますと、簡便、安い、迅速です。

CMみたいなキャッチコピーですが、要は、支払督促は、申立後裁判所に出頭する必要がない簡便な手続で、申立費用は通常の訴訟よりも半額というリーズナブルさで、裁判期日を開かないため早くて1か月から2か月で解決する迅速さがあります。

以上のように支払督促手続が魅力的に思えますが、勿論デメリットもあります。

以下の手続的流れでご紹介しますように、裁判所は書記官による書類審査のみで行われ、支払督促正本を債務者に送達する際に、債務者にも手続保障の機会を与えるべきという観点から、裁判所からの支払督促書の送付時に、ご丁寧にも異議の申立方法を説明する書面も同封します

 

そのため、実務上、支払督促を申し立てた場合、基本的には債務者が異議申立てをするケースが多いです。

 

手続的流れ

①申立てに必要な書類が揃ったら、債務者の住所を管轄する簡易裁判所に申立てをします。

→必要な書類については、裁判所によって異なる場合がありますので、事前に確認することをお勧めします。

②裁判所書記官が提出された申立書等に不備がないか確認し、なければ支払督促が出されます。

→不備の連絡があったら、速やかに対応するようにしましょう。通常追加提出までの期限を設けられます。

③債務者に対して支払督促正本が送達されます。同時に異議申立ての方法やひな形も同封されます。

→後日、送達結果が知らされます。

→もし債務者が支払督促を受け取らなかった場合、休日の送達にするか、新たな送達場所を裁判所に伝えます。場合によっては、追加の費用が発生する場合もあります。裁判所に伝えなかった場合は、支払督促の申立てを取り下げたとみなされます。

④仮執行宣言の申立て

→債務者が支払督促正本を受領した日から2週間以内に督促異議の申立てをしないときは、2週間目の翌日から30日以内に仮執行宣言の申立てをします。

→仮執行宣言の申立てをしない場合、発付された支払督促は効力を失います。

⑤仮執行宣言付支払督促正本の送達と同時に異議申立ての方法やひな形も同封されます。

→仮執行宣言の申立書に不備がなければ仮執行宣言付支払督促が発付されます。そして、債務者に仮執行宣言付支払督促正本が送達されます。債務者に送達されなかった場合の対応は③と同様です。

⑥仮執行宣言付支払督促の確定

→債務者が仮執行宣言付支払督促正本を受領した日から2週間以内に異議の申立てをしなければ、確定します。

⑦債務者が任意で支払わない場合は強制執行手続へ

 

申し立てる際の注意点

相手(債務者)に手続保障がある

支払督促の概要でも触れましたとおり、債務者には手続保障があります。

具体的には、支払督促正本を受領してから2週間以内に督促異議の申立て、仮執行宣言付支払督促正本を受領してから2週間以内に督促異議の申立て、があります。

債務者がこれら異議の申立てをした場合、通常の訴訟手続に移行します。

逆に言いますと、債務者からすれば、異議の申立てをしないと支払督促を認めたことになり、最悪の場合、強制執行により差押えを受ける可能性があります。

 

強制執行に至ったとしても、請求異議の訴えなどの救済手続もあります。くれぐれも強制執行を妨害するような行為はやめましょう。刑事罰を受ける可能性があります。

 

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相手の住所がわからないときは、通常訴訟をする

支払督促は、相手に手続保障があるため、相手の住所が判明していないと支払督促を申し立てることはできません

通常の訴訟であれば、相手の住所が判明していなくても、公示送達(裁判所の掲示板に債務者が来れば書類を交付する旨を掲示し、2週間経過したときに送達があったものとみなす制度)を利用すれば、一応訴訟は進行し始めます。

しかし、支払督促の場合は、概要でもご紹介しましたが、裁判所書記官が申立書に記載された内容と添付書類のみによって、支払督促命令を発します。

債務者の住所が不明の場合は、通常訴訟で債権回収を試みましょう。

 

まとめ

支払督促について簡単にご紹介しましたが、相手(債務者)に手続保障があることは注意が必要です。

そのため、実務上は支払督促の効果は弱く、あまり利用するケースはありません。

通常訴訟の方が、支払督促より時間はかかるものの、より確実に債権回収の可能性が高まるケースもあります。

債権回収でお悩みの方は当事務所までご相談ください。

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