COLUMN

コラム

【風俗営業における罰則②】無許可営業・名義貸し・客引き行為と法による制裁 

はじめに 

前回の風俗営業における罰則①では、風営法の遵守事項とこれに違反した場合の行政処分についてご紹介しました。 

今回は、前回に引き続き、風営法の禁止行為とこれに違反した場合の刑事上または行政上の制裁について、ご紹介したいと思います。 

 

風営法の禁止行為 

まずは、風営法が規定する禁止行為を見ていきます。 

無許可営業 

名義貸しの禁止 

客引き行為 

客引きのため、道路その他公共の場所で人の身辺に立ちふさがり又はつきまとうこと 

営業所で18歳未満の者に客の接待をさせること 

営業所で午後10時から翌日午前6時までの時間において18歳未満の者を客に接する業務に従事させること 

18歳未満の者を営業所に客として立ち入らせること 

営業所で20歳未満の者に酒類又はたばこを提供すること 

 

禁止行為のうち、無許可営業、②名義貸し、③④客引きについてその概要をご説明するとともに、これらに違反した場合の刑事上または行政上の制裁を簡単にご紹介します。 

 

 【関連記事】 こちらもあわせて読みたい
♦ 【風俗営業における罰則①】風営法の遵守事項と公安委員会による処分

 

無許可営業 

風営法は、風俗営業を営もうとする場合、都道府県公安委員会の許可を受けなければならないとしています(風営法3条)。しかし、無許可で風俗営業を行う事業者は現実問題としては少なくありません。 

無許可営業をする理由はさまざまですが、そもそも許可制であることを知らない、発覚しないだろうと軽く考え高を括っている、風俗営業が行えない地域で風俗営業を行っている、人的許可事由(後述)に該当せず、許可申請ができないから、などがあります。 

無許可営業が発覚するきっかけとしては、最も多いのが私服警察官による巡回(いわゆるおとり捜査)です。その他としては、近隣の住人や客からのタレコミ、SNSの投稿といったところから発覚することも少なくありません。 

 

刑事上の制裁 

無許可営業をしていた場合、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金、又はこの両方が科せられます(風営法49条1項1号)。この刑事罰は、風営法の中で最も重いものです。 

 

許可制の営業であるにもかかわらず無許可で営業をしていれば、最も重い罪に問われるのは必然といえます。 

 

行政上の制裁 

風営法の中で最も重い刑罰を科されるだけではなく、6月を超えない範囲で営業停止命令を受ける可能性があります。

無許可営業はそもそも許可を得ずに営業をしているわけですので、許可の取消しという概念が成り立ちませんが、行政処分としては比較的重い行政処分となります。 

 

申請許可の人的許可事由 

風俗営業の許可基準として、破産手続開始決定を受けた者1年以上の懲役若しくは禁錮の刑に処せられ、刑の執行が終わった日から起算して5年を経過していない者などは欠格事由があるとして許可を受けることができません(許可の人的許可事由。風営法4条)。 

 

また懲役刑または罰金刑を受けたにもかかわらず、これを偽りその他不正な手段により風俗営業の許可を得た者については2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金、又はこの両方に処せられます。 

 

名義貸し 

名義貸しとは、風俗営業許可の当事者でないにもかかわらず、他人から依頼されて自分の名義を貸して風俗営業の許可申請や契約を行うことをいいます(風営法11条)。 

例えば、先ほど挙げた許可にあたっての欠格事由があるため、従業員の名前を使って許可申請を行う場合、複数店舗を経営しているが、客引き行為によって全店に対する処分を回避するために、別の名前を使って許可申請した場合、などです。 

 

刑事上の制裁 

何らかの理由により、名義貸しを行い、実質的には経営に関わっていなかったとしても、名義貸し行為自体が禁止されていますので、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金、又はこの両方の処罰を受ける可能性があります。 

さらに、名義を借りた人も無許可営業として罰則を受けることになります。 

 

行政上の制裁 

名義貸しを行った場合、勿論刑事上の制裁だけではありません。風俗営業にあっては風俗営業許可の取消し、飲食店営業などその他営業にあっては6か月又は8か月の営業停止処分となります。 

そして、許可の取消しや営業停止処分を受けた者は、以後5年間は風俗営業の許可申請をすることができません(許可の人的許可事由)。 

 

客引き行為 

客引きとは、不特定の者の中から、相手を特定して、営業所の客になるよう勧誘することをいいます。客引き行為に関しては、以前のコラムでご紹介していますので、そちらをご覧ください。ここでは、刑事上と行政上の制裁についてのみ触れます。 

 

刑事上の制裁 

刑事罰としては、6月以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又はこの両方が科せられます。 

 

行政上の制裁 

他方、行政処分として、基本的に40日以上6月以下の営業停止命令を受ける可能性があります。 

 

 【関連記事】 こちらもあわせて読みたい
♦ 客引きをすると違法?~刑事処分だけでなく行政処分も~

 

両罰規定 

風営法には、従業員等が違反行為をした場合に、違反した従業員だけでなく、経営者や法人に対しても罰するという両罰規定があります(風営法56条)。 

 

そのため、例えば、従業員が客引きで逮捕された場合は、その店舗の代表者も罰せられる可能性があります。従業員に対する教育・指導の一環として、遵守事項や禁止行為があること、そしてこれらに違反すると法的責任を問われる場合があることを伝えておきましょう。 

 

その他の禁止行為と各制裁 

無許可営業、名義貸し、客引き行為以外の義務に違反した場合の刑事上または行政上の制裁については、以下の通りです。以下の諸行為は、あくまで代表的なものです。この他にも、多くありますので、警察から指摘されたり、逮捕されたときは弁護士に相談することをお勧めします。 

 

管理者を選任していなかったら・・・。 

刑事上の制裁:50万円以下の罰金 

行政上の制裁:5日以上40日以下の営業停止処分 

 

従業員名簿を備え付けていなかった/記載していなかったら・・・。 

刑事上の制裁:100万円以下の罰金 

行政上の制裁:40日以上6月以下の営業停止処分 

 

警察による立入りを拒否したり、妨害したら・・・。 

刑事上の制裁:100万円以下の罰金 

行政上の制裁:40日以上6月以下の営業停止処分 

 

年少者を接待(接客)業務に従事させたら・・・。 

刑事上の制裁:1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、またはこの両方 

行政上の制裁:営業許可取消し 

 

年少者を店に立ち入らせたら・・・。 

刑事上の制裁:1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、またはこの両方 

行政上の制裁:40日以上6月以下の営業停止処分 

 

20歳未満の者に酒類又はたばこを提供したら・・・。 

刑事上の制裁:1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、またはこの両方 

行政上の制裁:40日以上6月以下の営業停止処分 

 

最後に 

風営法違反で摘発され、刑事罰や行政処分を受けると、お店を立て直すことはかなり難しくなるでしょう。 

禁止行為(遵守事項も含む)に違反した場合の刑事罰と行政処分について知っておけば、より重い違反行為につながる前に対処することができます。 

しかし、知らないまま放置すれば、より重い違反行為として摘発される可能性が高くなります。 

日頃から代表者であれば従業員に対する教育や指導、従業員であれば風俗営業に従事する者としてやってはいけない行為などを把握しておけば、健全な風俗営業を行うことができるでしょう。 

そして、もし風営法など風俗営業に関して逮捕された場合には、当事務所までご相談ください。 

コラム一覧