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裁判にかかった費用を相手に請求できるのか

はじめに 

一般的に当事者間でトラブルが発生し、民事訴訟を提起することになった場合、裁判(訴訟)にかかる費用としてどのようなものがあるかを解説します。

この点はご相談者様からの質問も非常に多く、「訴訟費用」という用語の意味も誤解されている方が非常に多いです。

 

訴訟費用 

まず、民事訴訟を提起するためには、裁判所に収入印紙代郵便切手代がかかります。 こうした裁判所に関する費用のことを、一般的に訴訟費用と言います。

その他訴訟の内容によっては、鑑定費用などが発生する場合があります。 

 

弁護士費用 

訴訟費用とは別に、訴訟について弁護士に依頼する場合、弁護士費用が発生します。 

弁護士費用とは、いわゆる着手金と報酬金、それと実費です。 

弁護士費用は、事務所によって、また事件内容などによって異なりますので、依頼したい場合は相見積もりを採り、複数の事務所から話を聞くことをお勧めしています。

ここで注意が必要なのは、弁護士費用は弁護士に支払う費用であって、上記訴訟費用に含まれません。

つまり、弁護士に依頼した場合、弁護士費用に加えて、訴訟費用を支出する必要があります。 

一般的には、依頼の段階で、着手金とは別に、預かり金として費用を預かり、そこから収入印紙代や郵便切手代などを支出することが多く、事件終了時に残った預り金は返金とする事務所が多いようです。これも事務所によって異なることがありますので、事前に確認しましょう。 

また事務所または弁護士によっては、上記のように着手金・成功報酬方式とするところもあれば、弁護士が費やした時間に応じて報酬が定められるタイムチャージ方式とするところもあります。 

 

裁判にかかった費用を相手に請求できるのか 

では、本題に入ります。 結論は、原則として弁護士費用は自己負担であり、相手方に請求することは出来ません。

例えば、訴訟で(一部でも)勝訴判決を得たとします。判決主文をよく読むと、「訴訟費用は被告の負担とする。」とか、「訴訟費用はこれを10分し、その3を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。」という文言が記載されていると思います。 

このように裁判で支出した費用のうち、訴訟費用については相手方に請求することができます。 

弁護士費用は、原則として訴訟費用に含まれませんが、不法行為に基づく損害賠償請求の場合等には、例外的に弁護士費用を請求できるケースがあります。ただし、この場合であっても、弁護士費用全額ではなく、裁判所が認容した額の1割程度にとどまるのが一般的です。 

 

不法行為に基づく損害賠償請求をする場合 

→判例は、不法行為と相当因果関係に立つ損害については、「事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り」弁護士費用も含まれるとしています。 

このことから、現在の実務では、不法行為に基づく損害賠償請求が認容された場合、認容額の1割程度の弁護士費用が損害額に加算されるのが一般的です。 

 

労災に基づく損害賠償請求をする場合 

労災は、不法行為と同じ損害賠償であっても、使用者の労働者に対する安全配慮義務違反を理由とする債務不履行であり、法律構成が異なります。 

これについても、判例は、安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求において、労働者が主張立証すべき事実は不法行為に基づくそれと変わらないと判旨しました。 

つまり、労災であっても、例えば、会社に損害賠償を請求する場合は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の弁護士費用は損害に含まれます。

認容額の1割程度が認められるのが一般的であることは同じです。 

 

建築訴訟や医療訴訟、発信者情報開示請求訴訟など専門性の高い訴訟 

専門性の高い訴訟については、建築訴訟であれば建築士、医療訴訟であれば医師、というように弁護士以外の専門家による知見や経験則を用いて主張立証していかなければなりません。

そのため、本人訴訟(弁護士に依頼せず自分で訴訟すること)はかなり困難で、弁護士による訴訟追行が必須といえます。このような専門性の高い訴訟でも、認容額の1割程度の弁護士費用が認められる可能性があります。 

なお、発信者情報開示請求訴訟に係る弁護士費用については、裁判所によって判断が割れているところです。

 

訴訟費用を請求する方法 

残念ながら、勝訴したからといって自動的に訴訟費用の金額が確定するわけではありません。 

相手に訴訟費用を請求したい場合は、別手続として、訴訟費用額確定処分を申し立てなければなりません。そして、訴訟費用の項目やそれぞれ請求できる金額の上限も定められています。

この手続には、ある程度の手間と時間がかかること、基本的に訴訟費用は思ったほど高額にならないことが多いため、弁護士が双方入っている事件ではこの手続を行うことは実務上そこまで多くありません。 

また、これは別手続ですので、事務所または弁護士によっては、訴訟とは別に着手金等が発生する場合もありますので、確認することをお勧めします。 

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