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20歳未満の者の飲酒防止に関する法律(未成年飲酒)

はじめに

周知の事実ですが、満20歳未満の人はお酒を飲んではいけません。これは法改正で成人年齢が20歳から18歳に引き下げられた現在でも同様です。

居酒屋などで年齢確認をされた経験がある人も多いと思いますが、年齢確認は20歳未満の者の飲酒防止に関する法律に基づいて行われることです。

この法律では、店側にとっては年齢確認などの措置を講じなければならず、これに違反した場合は罰則があります。

また、飲酒した未成年者本人に対する同法上の罰則はありませんが、若年飲酒には健康上も様々なリスクが潜んでいます。酩酊した結果性被害に遭ったというご相談も多く、二次被害の危険も高いです。

今回は、店側が未成年者に飲酒させた場合や飲酒した未成年者はどうなるのか、親権者はどのような義務を負うのか、について以下でご紹介します。

 

飲酒した未成年者本人はどうなる?

20歳未満の者の飲酒防止に関する法律では、あくまで未成年者に酒類を提供した周りの成人に対して規制しているのであって、飲酒した本人に対する罰則はありません

しかし、20歳未満の者が酒類を飲んではいけない理由に、身体や精神への悪影響があるからという面を考えると、やはり20歳未満の者は酒類を飲むべきではないでしょう。

もし仮に飲酒が発覚した場合は、停学処分や退学処分といった制裁を与えられることがあります。

さらに、飲酒したことで他者とトラブルになったりした場合は警察署へ連行や補導されることもあります

 

成年年齢引き下げとの関係

成年年齢が18歳に引き下げられましたが、20歳未満の者の飲酒防止に関する法律には影響ありません。そのため、成年年齢が18歳未満に引き下げられても、20歳未満の者の飲酒は禁止されています。

 

親権者などへの罰則

未成年者ということは、法定代理人である親権者が存在します。その親権者は、未成年者が飲酒していることを知った場合、これを制止する義務があります(1条4項)。

条文上、父母といった親権者のみならず、親権者に代わって未成年者を監督する監督代行者も同じ義務を負います。

親権者又は監督代行者が、制止義務に違反した場合は、科料が科されます(3条2項)。監督代行者とは、親権者に代わり日常的に未成年者を監督すべき義務を負っている者をいい、監督代行者については、裁判例上、親権者から契約等によって依頼されたり、あるいはそのような依頼がなくとも事実上親権者に代わり未成年者を手元に引き取り、同居させるなどして日常一般的、包括的に監督する者がこれにあたるとされています。

すなわち、親権者との契約に基づいて未成年者を預かっている学生寮の監督者や、未成年者の従業員を住み込みで預かって生活の面倒を見ている者などが監督代行者に当たると考えられます。他方、大学の先輩(20歳以上)が後輩(20歳未満)といっしょに飲酒したようなケースでは、当該大学の先輩は監督代行者には当たらないと考えられます。

科料と似たような言葉に過料がありますが、過料は行政上の秩序罰をいい、科料は刑事罰をいいます。これらの違いは金額です。科料は1000円以上1万円未満の罰金を指しますので、刑事罰の中では比較的軽い罪の罰則ということになります。

そのため、科料が科されたら、前科が付く可能性がありますし、科料を納付しなかったら労役場に留置され、1日いくらと定められた金額で払い終わるまでそこで働きます。

 

酒類を販売または提供した店は?

スーパー・コンビニ・バーなど、お酒を扱っているお店は、未成年者であることを知りながら酒類を販売したり提供したりすることは禁止されています(1条3項)。

これに違反すると、50万円以下の罰金に処せられるだけでなく(3条1項)、営業の代表者や代理人、使用人、その他従業員が未成年者であることを知りながら提供などをした場合には、営業者も罰せられます両罰規定、4条)。

 

では、店側が20歳未満であることを知らなった場合はどうでしょうか。

20歳未満の者の飲酒防止に関する法律では、店側が未成年者であることを知って酒類を提供した場合のみに罰金が科せられることになっているので、知らないまま酒類を提供したとしても適用されません。

しかし、同法は、店側は20歳未満の者への酒類提供を防止するために年齢確認その他必要な措置を講じる義務があります。

そのため、20歳未満であること知らないまま酒類を提供したとしても、こうした措置を講じなかったことが違反行為となります(ただ見た目から明らかに20歳以上であるとわかる場合はこのような措置を講じる必要はまずないでしょう。)。

同法上、こうした違反行為に対する罰則はありませんが、年齢確認をせずに20歳未満の者に酒類を提供した結果、その者が急性アルコール中毒になったりした場合は、店が民事上の損害賠償責任行政上の酒類販売業の免許取消しといった制裁受けるケースも少なくありません。

 

飲酒にはさまざまなトラブルが潜んでいる

未成年者飲酒禁止法とは少し離れますが、アルコール・ハラスメント(略称アルハラ)という言葉があるくらいですので、未成年者に対してでなくても、飲酒を強要すれば強要罪(刑法223条1項)や傷害罪(刑法204条)などが成立する可能性がありますし、これに乗じて性的暴行を加えたなどであれば不同意性交罪(刑法177条)にあたる可能性すらあります。

 

最後に

アルコールを飲ませたというたった一つの行為で、潜在的に多くの犯罪が成立する可能性があります。

飲酒を強要された被害者、または飲酒したことでトラブルを抱えてしまった加害者など飲酒にまつわるトラブルでお悩み、お困りの方はお気軽に当事務所までご相談ください。

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