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個人情報保護法における開示請求手続

はじめに

個人情報保護法は、個人情報の取扱いに関して事業者に義務を課している一方、本人にも、自分の個人情報をどう守るかという観点から開示等の手続が規定されています。

基本的に、各事業者は、開示等の請求に関する情報をホームページ上で公表又は本人の知り得る状態にしています。

 

今回は個人情報保護法における開示等請求について概要などを簡単にご紹介します。

なお、個人情報などの定義に関しては以下の関連記事をご参照ください。

 

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♦ 個人情報保護法での「個人情報」には何が含まれる?

 

開示請求権

個人情報保護法は、「本人は、個人情報取扱事業者に対し、当該本人が識別される保有個人データの電磁的記録の提供による方法その他の個人情報保護委員会規則で定める方法による開示を請求することができる。」と規定しています(個人情報保護法33条)。

つまり、誰でも、事業者に対して、自分であると識別される保有個人データの開示を請求することができます。例えば、医療機関に対して、自分のカルテの開示を求めることです。

 

そして、事業者は開示しない旨の決定をしたとき、そもそも保有個人データが存在しないとき、又は本人が請求した方法による開示が困難なときは、通知しなければなりません。

 

保有個人データが存在しないとは

保有個人データとは、事業者が保有している個人情報のうち、事業のため収集した顧客情報などを本人から開示を求められたときに、開示の権限を有する個人データをいいますが、個人情報取扱事業者が開示等の権限を有していたとしても、その存否が明らかになることにより、本人または第三者の生命、身体または財産に危害が及ぶおそれや、違法や不当な行為を助長、または誘発するおそれ国の安全が害されるおそれ、他国もしくは国際機関との信頼関係が損なわれたり交渉上不利益を被ったりするおそれ弊害が生じるおそれがある個人データについては、保有個人データにあたらず、開示請求をしても保有個人データが存在しないとされます。

 

開示請求手続

事業者ごとに、開示請求の手続は異なりますが、一般的には、開示請求の申出先、所定の請求書、手数料の有無などが定められており、請求する場合は、これらに従って請求をします。実際に開示請求をする場合は、事前に事業者に問い合わせたほうがよいでしょう。

 

開示請求権は法的な請求権ですので、裁判で請求することは可能ですが、まずは任意で開示請求をしなければなりません(個人情報保護法39条)。ただし、開示請求書が事業者に到達してから2週間を経過した場合や事業者が予め開示請求を拒んでいる場合は、直ちに訴訟を提起することができます。

 

一定の事由に該当する場合、開示されない場合がある。

事業者に開示請求を行ったとしても、開示請求が一定の事由に該当すると認められた場合は不開示、つまり開示されません。

具体的には、病名等を開示することで、患者本人の心身に影響を及ぼすといった本人又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合、試験の採点情報を開示することで、試験運営を適正に実施できないといった当該個人情報取扱事業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合、秘密漏示罪(刑法134条)に違反するといった他の法令に違反することとなる場合は不開示となります。

 

開示請求以外にも請求できることがある

個人情報保護法上、開示請求以外にも、訂正等利用停止等第三者提供の停止等を請求することができ、具体的な請求手続は開示請求と同様です。

 

保有個人データの内容の訂正、追加または削除の請求

本人は、本人であると識別される保有個人データの内容が真実でないときは、内容の訂正、追加又は削除を請求することができます。

この場合、請求を受けた事業者は、遅滞なく必要な調査を行い、その結果に基づき訂正、追加又は削除をしなければならず、これらを行ったとき又は訂正等を行わない旨の決定をしたときはその旨を本人へ通知しなければなりません(個人情報保護法34条)。

 

保有個人データの利用の停止または消去の請求

本人は、保有個人データが本人の同意なく目的外利用されたときは、保有個人データの利用停止又は消去を求めることができます。

この場合、請求を受けた事業者は、その請求に理由がある場合は、利用停止等を行わなければなりません(個人情報保護法35条)。ただし、利用停止等措置に多額な費用を要する場合など利用停止等を行うことが困難であり、かつ事業者が本人の権利利益を保護するため代替措置を講じたときは利用停止等を行う必要はありません。なお、本人に対する通知義務は課せられます。

利用停止又は消去の請求は、同意なく目的外利用されたとき以外にも、①違法又は不当な行為を助長し、または誘発するおそれがある方法により利用されているとき、②偽りその他不正の手段で取得され、または要配慮個人情報であるのに本人の同意を得ずに取得されたものであるとき、③保有個人データを事業者が利用する必要がなくなったとき、④個人情報保護委員会に対する報告等が必要な保有個人データの漏えい等の事態が生じたとき、⑤その他本人の権利または正当な利益が害されるおそれがあるとき、も請求事由です。

 

保有個人データの第三者提供の停止請求

保有個人データが個人情報保護法に違反して第三者へ提供されているときは、その停止を請求することができます。

この場合の請求を受けた場合の事業者の対応は、利用停止等と同様です。

また、法に違反して第三者へ提供されているとき以外にも、①保有個人データを事業者が利用する必要がなくなったとき、②個人情報保護委員会に対する報告等が必要な保有個人データの漏えい等の事態が生じたとき、③その他本人の権利または正当な利益が害されるおそれがあるとき、も停止請求事由となります。

 

最後に

保有個人データに関しては、個人情報保護法上、利用目的などの一定の事項を公表するなど、本人の知り得る状態に置くことを事業者の義務とされています。公表する方法については、一般的にはホームページ上のプライバシーポリシーにおいて公表されていることがほとんどです。今回ご紹介した開示請求についても、公表等すべき事項とされています。

あまり多くはないですが、開示等の請求手続において、訴訟にまで発展した場合は弁護士等の専門機関で相談されることをお勧めします。

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