詐欺罪の立証はなぜ難しい?
刑法246条が規定する詐欺罪は、数多くある犯罪の中でも特に立証が難しいと言われています。
詐欺被害に遭われて、これから被害届や刑事告訴をしようと考えている方にとっては、「立証が難しい」と言われると無念な気持ちになってしまうでしょう。
そもそも、なぜ詐欺罪は立証が難しいと言われているのでしょうか。詐欺罪の構成要件の一つである「欺罔行為」が特に関係しますので、「欺罔行為」についてからご紹介したいと思います。
詐欺罪の構成要件と法定刑
詐欺罪は、欺罔行為、被害者の錯誤、錯誤に基づく被害者による財産交付行為、財産的損害が一連の因果関係があったときに成立し、10年以下の懲役に処せられます(刑法246条)。
欺罔行為とは、相手が真実を知っていれば財産的処分行為を行わないような重要な事実を偽ることをいいます。
例えば、当初から返済する気がないのにそれを秘して必ず返済すると言って借入をする行為や、支払う意思がないのに飲食物を注文する行為、実際に投資をする気はないのに投資を謳い投資資金として振り込ませる行為などは欺罔行為にあたります。
その他の構成要件等については、関連記事をご覧ください。
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詐欺罪の立証はなぜ難しい?
立証のポイントは犯人の「内心」
詐欺罪の立証が難しいと言われている理由は、加害者の内心を証明できるだけの証拠を集めることが非常に難しいからです。
そもそも詐欺罪が成立するための第一歩は加害者による欺罔(騙す)行為です。
つまり、この欺罔行為では、犯人が被害者を騙す時点で、「被害者からお金を出させるように嘘をつくなどして騙して、お金を受け取る」という認識・認容が必要なのです。そして、被害者(又は捜査機関)は、犯人が初めから騙すつもりだったという事実を立証する必要があります。
これを被害者が被害届や刑事告訴をするにあたって立証できるかと言われれば、目で見てわかるものではないので、いかに困難であるかは感覚としてもお分かりかと思います。
犯人の内心を立証できる証拠は?
たしかに、犯人の内心を立証する必要があるため、詐欺罪の立証は難しいと言われます。
また仮に犯人が逮捕されたとしても、「詐欺をするつもりはなく、お金も返すつもりだった。」と供述されれば、欺罔行為は否定されそうです。
しかし、立証が難しくても、メール・LINEなどやり取りの履歴、送金記録、振込先の銀行口座、サイトがあればURLが写ったスクリーンショット、契約書類などで犯人の内心を証明できる可能性があります。
具体的にいえば、【当初から返済する気がないのにそれを秘して必ず返済すると言って借入をする行為】に詐欺罪が成立するかという事例では、行為者が行為当時、債務超過で到底借金を返せる状況になかったという客観面からの証拠を固めることができれば、返済する気があったと行為者が主張したとしても、当時の客観的状況から到底返済できる状況になかったという事実は、主観面で【当初から返済する気がない】ということを裏付ける一つの証拠になります。
最後に
詐欺罪は立証が難しい犯罪です。
しかし詐欺被害に遭った場合には、民事又は刑事で回復を図るほかなく、どちらの手続を選択するにしろ、証拠は極めて重要になります。
詐欺被害に遭われた方は、どのような証拠が必要か、事案によってアドバイス致しますので、当事務所までご相談ください。
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