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逮捕されるのではないか不安であれば弁護士にご相談を

何かしらの犯罪をしてしまったことが明らかである、もしくは自分がした行為が犯罪であることは明らかであり、その場合に実際逮捕されるのかという不安や恐怖を抱え続けたままですと強いストレスを感じるでしょう。

そもそも逮捕にはどのような手続があるのか、逮捕されてしまう可能性を少しでも下げるには(非現実的な海外逃亡等ではなく)何をすべきなのか、最終的に不起訴処分を獲得するためにはどうすればいいのか、など逮捕に関するよくあるご質問と回答についてご紹介します。

 

どのような場合に逮捕されるのか

まず、逮捕にはどのような手続があるのかですが、前提として逮捕には、刑事訴訟法上、現行犯逮捕(+準現行犯逮捕)通常逮捕緊急逮捕があります。ちなみに、刑事訴訟法とは、法律を勉強していない限り、馴染みのない法律ですが、平たく言いますと、刑事手続は、犯罪発生後、警察などによる捜査が始まり、犯人が逮捕・勾留され、裁判が行われ、刑罰が科されます。

この一連の手続について定めた法律が刑事訴訟法です。

 

さて、逮捕の種類のうち、現行犯逮捕は、まさに犯罪行為が現在進行系で行われていたり、又は行われた直後であるときでないと出来ません(刑事訴訟法212条2項)。電車内の痴漢で、まさに女性のお尻を触っている痴漢犯人を偶然乗り合わせた人が目撃し、取り押さえるというケースがこれにあたります。

緊急逮捕は、①死刑、無期、懲役や禁錮3年以上の重大な犯罪であること、②罪を犯したと疑うに足りる十分な理由があること、③緊急を要し裁判所に逮捕状を求める時間的余裕がない場合にとられる手続です(刑事訴訟法210条)。この場合は、緊急逮捕後に裁判官に対して逮捕状請求がなされることになります。

「逮捕されるのではないか不安」ということは、少なくとも現行犯逮捕ではないでしょう(緊急逮捕もあり得ることはあり得ますが、極端に言いますと指名手配犯等でなければ、一般的には通常逮捕の手続となることが多いです。)。

 

通常逮捕の要件

現行犯逮捕、緊急逮捕に比べて、実務上一番良くあるものが通常逮捕です。

ただし、通常逮捕は、警察が自分の判断だけで好き勝手に行えるわけではありません。現行犯逮捕や緊急逮捕と同じように、刑事訴訟法で、通常逮捕ができる場合(つまり要件)が定められています。そのうえで事前に逮捕状を裁判官に発付してもらう必要があります。

 

被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること(逮捕の理由)

特定の犯罪が行われたということと、逮捕される者がその犯罪を行ったことが、相当程度に確からしいと認められることが必要です。何らかの犯罪が行われたといった曖昧で不十分である場合や、そもそも逮捕される者が犯人である可能性が低い場合には、逮捕の理由がないとされるでしょう(後ほどご紹介しますが、通常逮捕は逮捕状を裁判官に請求し、裁判官が発付するものなので、逮捕の要件を満たすかどうかは客観的証拠に基づいて、警察ではなく裁判官が判断します。)。

 

逃亡又は証拠隠滅のおそれがあること(逮捕の必要性)

逮捕の必要性とは、罪を犯したと疑われる人が逃亡したり、証拠を隠滅したりするおそれがあることです。もっとも、逮捕される者の年齢や犯罪の軽重なども考慮して、逮捕(身柄拘束)の必要性がなければ、この要件を満たしません。他方、住居不定の者であれば、逮捕の必要性はほぼほぼ間違いなく認められることになります。

 

逮捕に至るまで

犯罪事実の認知

警察が犯罪があったことを知るきっかけとなるのは、いくつかありますが、概ね、被害者や目撃者による通報、被害者による被害届の提出又は刑事告訴、職務質問などが端緒となることが多いです。

 

個人の特定

捜査機関は、犯行現場を中心に、防犯カメラ映像や、被害者及び目撃者などの情報などの情報を元に、犯人の特定作業に入ります。

 

逮捕状の請求、発付、執行

犯人が特定され、犯罪事実が明らかになり、犯人が逃亡のおそれがある、又は証拠隠滅のおそれがあると捜査機関が判断した場合は、裁判官に対して、逮捕状を請求します。そして、裁判官は請求が正当と認めれば逮捕状が発付されます。

ちなみに、逮捕状の有効期限は7日間ですので、期限内に逮捕されるのが一般的ですが、何らかの事情により期限内に逮捕できなかったとしても、再度請求して発付することは可能です。したがって、逃亡しても無駄ということです。

 

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出頭要請に応じたら逮捕される?

警察からの出頭要請に応じ、出頭した場合、必ずしもそのまま逮捕されるわけではありません。

もちろんあらかじめ逮捕を予定した上での出頭要請がなされることもありますが、電話で呼び出されて行ったら逮捕されたというのは多くはなく、むしろ逮捕されないことの方が多いです。

もっとも出頭要請に対して何度も応じなかったら逮捕される可能性はあります。

基本的には、アポを取ったのに2回ドタキャンをしたり約束の日時に出向かなければ、警察は逮捕状を取った上で逮捕しに来ます。

 

逮捕されるとどうなるのか

逮捕後の流れについては、一般的な刑事事件の流れを見るとお分かりになるでしょう。

つまり、警察は逮捕後48時間以内に検察官へ送致します。その後、検察官は送致されてから24時間以内に勾留請求をします(検察官が勾留請求をしない、又は裁判官がその請求を却下した場合は、逆送バスで警察署に帰ってきた後に、釈放手続に入ります。)。

勾留請求され勾留が付くと、引き続き警察署等施設で拘束されます。勾留決定の日から10日間、さらに10日間延長することができますので、逮捕からは最長で23日間身体拘束を受けます。

その後、検察官が公判請求するか(刑事裁判とするか)、略式で罰金刑にするか、不起訴にするか判断します。公判請求され起訴となり実刑判決が下されて確定すれば、刑務所で過ごし、不起訴となれば事件は終了となります。罰金の場合には身柄は釈放され、後ほど罰金を納付します。

 

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逮捕されないケースもある

通常逮捕の要件としては、先ほどご紹介した通りですが、刑事手続上、必ずしも逮捕しなければいけないわけではありません。

捜査機関において、犯人に逃亡のおそれがある又は証拠隠滅のおそれがあると判断されれば、逮捕(身体拘束)することが出来るということになります。

逆に言いますと、逃亡のおそれがない、又は証拠隠滅のおそれがないと判断されれば、逮捕されずに、自宅で生活しながら、警察から呼出しがあった際に警察署に出頭して取調べを受ける方法によって刑事手続が進むこともあります。これを在宅事件といいます。被疑事実が軽微なものであったり、過失犯(被害者が死亡していない場合の交通事故など)や軽犯罪ではよく在宅事件の手続がとられています。

 

 

逮捕をされないためにはどうしたらよいのか

示談を締結し、事件化を防ぐ

被害者との間で、刑事事件として立件化される前に、示談が成立すれば逮捕を避けることができます。

示談書の内容は被害者と加害者で話し合って双方合意に至った事項を加えて決めていきますが、宥恕文言(要するに「犯人を許します。」との文言)を記載し、またその他民事上の損害賠償を求めないという民事上の請求もしないこととし、刑事・民事一体となって解決するのが一般的です。

これは犯人側からすれば刑事事件だけでなく後々被害者から民事裁判を起こされるリスクを無くすことになりますし、他方、被害者からしても数十万円も自腹を切って弁護士に依頼し、民事裁判を起こさなくても被害弁済を受けられるというメリットがあります。

 

自首(警察からの呼び出しを受けていない場合)

自首をすると、逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがないと判断されやすく、よって逮捕されない(在宅事件となる)可能性は逮捕を待つより高くなります。自ら罪を告白した者に対し、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断するとは考えにくいとされているためです。また、自首したケースでは逃亡のおそれが減少するため、一般的には保釈も通りやすくなります。

自首する場合には必ず弁護士に同行してもらうようにしてください。本来は自首に当たるのに、警察が自首扱いしてくれない事例が散見されます。

 

身元引受人の存在と誓約書の提出

逃亡のおそれがないことがわかるものとして、身元引受書があります。本人を監督できる存在、一般的には、配偶者や両親(同居している場合)が身元引受人となりますが、事情によっては交際相手や会社の上司も身元引受人になれる場合もあります。

また自首する本人からは、逃亡しないこと、証拠隠滅しないこと、呼出しを受けた際には速やかに応じることなどを記載した誓約書を提出することもあります。

 

弁護士に相談

逮捕されないために、早期に示談を成立させ、事件化そのものを防ぐ、あるいは身元引受人を用意して自首するという場合であっても、弁護士のサポートは重要です。

当事者間での示談は感情的になり決裂することが多く、そもそも警察から被害者と接触しないよう言われますし、示談をしたいなら弁護士をつけろと言われるはずです。

またご家族に身元引受人をお願いするにしても、身柄拘束を受けている身ではスマホを操作して外部と連絡をすることは不可能です。

したがいまして、逮捕されないための行動をするには、弁護士のサポートは必須であり、逮捕されないためにどのようなことができるのかを弁護士に相談することをお勧めします。

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