源氏名への誹謗中傷は名誉毀損に当たり得るか?

ホストやキャバ嬢などは、通常、本名とは違う源氏名で仕事をしています。またホストでなくてもテレビタレントも本名を隠して活躍している方もいらっしゃいます。
こうした源氏名又は仮名で仕事に従事する人に対しても、ホストラブ(通称ホスラブ)や2ちゃんねるなどのインターネット上の掲示板では、源氏名又は仮名での誹謗中傷を受けることがあります。
源氏名に対する悪質な内容の投稿は、本人への誹謗中傷に当たるのか
主に水商売の仕事に従事している方に対する投稿でよく書き込まれるのが、ホスラブや爆サイといったネット掲示板やXやInstagramでも起こり得ます。
そして、その投稿内容は、本人にとっては事実無根であったり、本人の容姿を蔑むようなものもあります。
ただ、こうした投稿が誹謗中傷といえるかどうかについては、誹謗中傷に関する法律上の定義はないため、その投稿内容が誹謗中傷に当たるのかは、弁護士、裁判所の判断を求めるならば裁判官の判断次第となります。
社会的評価が低下したといえるためには、同定可能性が重要
さて、例えば、「●●(源氏名)に妊娠させられた」という事実無根の投稿がなされたとして、この投稿が事実無根であって、社会的評価が低下したと言えるためには、「その人」の社会的評価が低下したといえることが必要であって、「その人」が特定できることが重要です。こうした誹謗中傷されている人が誰であるのかが特定できることを「同定可能性」といいます。
逆に言いますと、例えば、「●●というホストクラブに所属するあるホスト」という書き込みだった場合は、そのホストが誰であるかが客観的に見て特定できるものではないため、同定可能性が認められない可能性があります。
また、源氏名であっても、同定可能性は十分に認められる可能性はありますが、同じ源氏名を使用しているホストやキャバ嬢がいる場合も同定可能性が認められないことがあります。
そのため、裁判所に申し立てる発信者情報開示請求の場合は、特に同定可能性に関しては主張立証を十分に尽くす必要があります。
誹謗中傷に当たり得る投稿を見つけたとき
以上のように、その投稿が誹謗中傷にあたるかどうかの判断は、一概にはできないものです。しかし、誹謗中傷に当たるかわからないけど、少なくとも事実無根の投稿であるから、弁護士に相談してみようと思った際には、証拠として保存しておきましょう。
その際、注意が必要なのが、次の2点です。
- 投稿日からの日数
- スクリーンショットでの残し方
投稿日からの日数
これは、ログの保存期間に大いに関係しますが、アクセスログの保存期間は概ね3か月とされています(プロバイダ会社によって異なります。ちなみに、ホスラブは1ヶ月です。)。そして、裁判所に対する申立ての準備や申立後の審理スケジュールを考慮すると、誹謗中傷を受けたと感じた場合は、すぐに弁護士に相談することをお勧めします。
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スクリーンショットでの残し方
実務上の話になりますが、裁判所に証拠として提出する際には、その投稿のURLが全て載っている状態を提出します。
そのため、当事務所ではご依頼直後すぐに証拠として提出できる形でスクリーンショット保存しますが、弁護士に相談する前段階では、相談時までに投稿が消されてしまう可能性もあるため、ご自身で証拠保存をする際には、URLが全て載っている状態でスクリーンショットをすることをお勧めします。
最後に
源氏名であっても、同定可能性が客観的に認められれば、源氏名や仮名の誹謗中傷の被害に遭ったとしても、発信者情報開示請求によって投稿者を特定できる可能性が十分にあります。
しかしながら、投稿者を特定するためには、ログの保存期間に十分に注意しなければなりません。
またそもそも誹謗中傷に当たるのかわからない場合もあると思います。そのような時はお早めに当事務所までご相談ください。当事務所では、これまで同定可能性が争点となるケースにおいて、発信者情報開示請求のみならず、刑事告訴の受理もさせてきた実績があります。
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