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【令和7年6月28日施行】悪質ホストクラブに対する改正風営法が施行へ

はじめに

令和7年5月23日、売掛金スカウトバックなどを規制することが盛り込まれた改正風営法が成立し、公布から1ヶ月後に施行されます。具体的には、令和7年6月28日施行となります。

今回は成立した改正風営法の中でも、新設された規定、追加された規定などについてご紹介したいと思います。

 

主な風営法の改正内容

 

風俗営業不適格者の排除【第4条1項7号・13号】

ホストクラブやキャバクラなど風俗営業を開始しようとする人は、公安委員会の許可を得なければなりません。ただし、許可の申請をすれば誰でも許可されわけではありません。

改正前の風営法では、風俗営業を営むにあたって、人的又は営業所的な欠格事由が規定され、これに該当すると許可取消しの処分が規定されていました。これに該当する者には風俗営業は許可されません。

しかし、一部の風俗営業をするグループでは、許可取消処分から逃れるため、処分される前に自主的に営業許可証を返納したうえで、グループとは別名義で営業をするという事態が多数ありました。

こうした事態を受け、今回の改正では、風俗営業をするにあたって不適格者を厳格に排除する目的で、これに関する欠格事由が新たに追加されました。

 【参照条文】第4条(許可の基準)
公安委員会は、前条第1項の許可を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当するときは、許可をしてはならない。

(一から六 略)

七 当該許可を受けようとする者(法人に限る。イ及びハにおいて同じ。)と密接な関係を有する次に掲げる法人が第26条第1項の規定により風俗営業の許可を取り消され、当該取消しの日から起算して5年を経過しない者である者

イ 当該許可を受けようとする者の株式の所有その他の事由を通じて当該許可を受けようとする者の事業を実質的に支配し、又はその事業に重要な影響を与える関係にある者として国家公安委員会規則で定めるもの(ロにおいて「親会社等」という。)

ロ 親会社等が株式の所有その他の事由を通じてその事業を実質的に支配し、又はその事業に重要な影響を与える関係にある者として国家公安委員会規則で定めるもの

ハ 当該許可を受けようとする者が株式の所有その他の事由を通じてその事業を実質的に支配し、又はその事業に重要な影響を与える関係にある者として国家公安委員会規則で定めるもの

(八から十二 略)

十三 第3号に該当する者が出資、融資、取引その他の関係を通じてその事業活動に支配的な影響力を有する者

 

今回の法改正で、これらの規定が追加されたことで、親会社などが営業許可を取り消された法人警察による立入検査がされた後に営業許可証を返納した者暴力的行為を行うおそれのある者が法人の事業活動に支配的な影響力を有する場合、については営業の許可はされません。

 

客の恋愛感情に乗じた飲食等の要求などの禁止【第18条の3】

今回の法改正となった背景には、店の飲食代金について客が誤認するような虚偽の説明がなされた事案や、客の恋愛感情に乗じて高額な飲食代金を売掛金にさせる事案、客が注文していないものを勝手に注文したりする事案などのトラブルが相次いでいました。こうした客の正常な判断を著しく阻害する行為も今回の法改正により規制対象となりました。

 【参照条文】第18条の3(客の正常な判断を著しく阻害する行為の規制)
第2条第1項の営業を営む風俗営業者は、その営業に関し、次に掲げる行為をしてはならない。

一 第17条に規定する料金について、事実に相違する説明をし、又は客を誤認させるような説明をすること。

二 客が、接客従業者に対して恋愛感情その他の好意の感情を抱き、かつ、当該接客従業者も当該客に対して同様の感情を抱いているものと誤信していることを知りながら、これ乗じ、次に掲げる行為により当該客を困惑させ、それによって遊興又は飲食をさせること。

イ 当該客が遊興又は飲食をしなければ当該接客従業者との関係が破綻することになる旨を告げること。

ロ 当該接客従業者がその意に反して受ける降格、配置転換その他の業務上の不利益を回避するためには、当該客が遊興又は飲食をすることが必要不可欠である旨を告げること。

三 客が注文その他の遊興又は飲食の提供を受ける旨の意思表示をする前に遊興又は飲食の全部又は一部を提供することにより、当該客を困惑させ、それによって当該遊興をさせ、若しくはしたものとさせ、又は当該飲食をさせること。

 

つまり、ホストクラブやキャバクラといった接待飲食営業者(従業員も含む)は、料金に関して虚偽の説明してはならず、さらに客が注文していない飲食の全部又は一部を一方的に提供してはなりません

いわゆる恋愛商法の部分に関しては、

①客がキャストに対して恋愛感情等の好意を抱き、

②キャストも客に対して同様の感情を抱いているものと客が誤信していることを知りながら、

これに乗じて下記の行為のいずれかを行い、それによって客を困惑させて遊興や飲食をさせるという要件を満たす必要があります。

(イ)客が遊興や飲食をしないと、客とキャストの関係が破綻することになると告げること

(ロ)キャストが降格やクビなど業務上の不利益を回避するためにはその客が飲食や遊興をすることが必要不可欠であると告げること

 

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売掛金規制【第22条の2】

今回の風営法改正に至った大きな社会問題の一つに悪質ホストクラブによる売掛金問題があります。売掛金とは、いわゆるツケのことで、その金額は高額になり、客は支払うことができずに、風俗店で働くようホストから言われたり、悪質な取立被害に遭うケースが多発しています。こうした問題を受け、ホストやキャバクラなどの接待飲食営業を営む者の禁止行為が改正により新設されました。

 【参照条文】第22条の2(接待飲食営業を営む者の禁止行為)
第2条第1項第1号の営業を営む者は、その営業に関し、次に掲げる行為をしてはならない。

一 客に注文等をさせ、又は当該営業に係る料金の支払その他の財産上の給付若しくは財産の預託若しくはこれらに充てるために行われた金銭の借入れ(これと同様の経済的性質を有するものを含む。)に係る債務の弁済をさせる目的で、当該客を威迫して困惑させること。

二 客に対し、威迫し、又は誘惑して、料金の支払等のために当該客が次に掲げる行為により金銭その他の財産を得ることを要求すること。

イ 売春防止法その他の法令に違反する行為をすること。

ロ 対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交類似行為(性交類似行為をし、又は他人の性的好奇心を満たす目的で、当該他人の性器等を触り、若しくは当該他人に自己の性器等を触らせることをいう。)をすること。

ハ 第2条第6項第1号若しくは第2号又は第7項第1号の営業において異性の客に接触する役務を提供する業務に従事すること。

ニ 性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律第2条第3項に規定する性行為映像制作物への出演をすること。

ホ 外国において売春をすること。

 

この規定により、社会問題となっていた売掛金を設定する行為自体も禁止行為となり、また売掛金の回収にかこつけて、女性客に売春行為をさせたり、わいせつ行為をしたりさせたり、風俗店で働き又はアダルトビデオに出演させ、そこで得た稼ぎで売掛金を支払うよう要求することは禁止されます

そして、22条の2に規定する禁止行為に違反した者は、6月以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金、又はこの両方が科され(改正風営法53条1項2号)、その者が所属する法人に対しても両罰規定として同様の罰金刑となります(改正風営法57条1項2号)。

社会問題になっていたいわゆる「たちんぼ」や海外売春斡旋を法律改正で明確に違法行為と規定した趣旨と思われます。

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スカウトバック規制【第28条13項】

売掛金を回収するにあたっては、ホストが風俗店業者に女性客を紹介し、業者から紹介料を受け取る事案も多発しています。ここ最近の裁判例でも、こうしたスカウトバックは、組織犯罪処罰法上の犯罪収益であるとして、ホストに有罪判決が下りました。この裁判例は、スカウトバックについて司法の判断が初めてなされたケースです。

立法面においても、スカウトバックに関して規制する規定が新設され、これに違反した場合は、売掛金同様、6月以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金、又はこの両方が科され(改正風営法53条1項7号)、法人に対する両罰規定もあります(改正風営法57条1項2号)。

 【参照条文】第28条第13項
13 第2条第6項第1号又は第2号の営業を営む者は、営業所で異性の客に接触する役務を提供する業務に従事しようとする者の紹介を受けた場合において、当該紹介をした者又は第三者に対し、当該紹介の対価として金銭その他の財産上の利益を提供し、又は第三者をして提供させてはならない。

 

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令和7年5月28日官報公布~1ヶ月後に改正風営法施行へ

ここまでご紹介した主な改正風営法の施行日ですが、公布日から1ヶ月を経過した日に施行される予定です。そして、令和7年5月28日付の官報にて、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律をここに公布する。」とされました。

したがいまして、今回ご紹介した内容の風営法が施行されるのは、原則として、令和7年(2025年)6月28日となります。

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