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刑事告訴のご相談が多い犯罪類型|受理に向けた背景と注意点

はじめに

当事務所には、刑事告訴に関するご相談が数多く寄せられています。

「警察署に相談に行ったが、持参した証拠すら見てもらえなかった」
「事件かどうか分からない、と言われ被害届や告訴状を受け取ってもらえなかった」

このように、警察から受理を拒否されたという方は後を絶ちません。また、被害届は提出できたものの、結局捜査が進展せず、加害者に刑事責任を問えないまま時間だけが過ぎていく、というケースも少なくありません。

本記事では、当事務所に特に多く寄せられる犯罪類型を取り上げ、なぜこれらの犯罪で刑事告訴が必要となるのか、その背景と実務上の注意点を解説します。犯罪被害に遭われ、刑事告訴を検討されている方の一助となれば幸いです。

 

名誉毀損罪(刑法230条)

インターネットの普及、XInstagramFacebookTikTokホスラブ爆サイなど、今では誰しもがiPhoneなどのスマートフォンを持ち、誰でも簡単に匿名で掲示板等に書き込みができるようになった反面、ネット上のトラブルとして誹謗中傷は増加の一途をたどっています。

誹謗中傷に関して、よく話題に出るのが「名誉毀損」です。

名誉毀損罪は、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」場合に成立します。この犯罪は親告罪であるため、被害者が処罰を求める意思表示(告訴)をしなければ、検察官は起訴できません。犯人を知った日から6ヶ月という告訴期間の制限もあります。つまり、加害者の刑事責任を問うには、刑事告訴が不可欠です。

ただし、名誉毀損罪の成立には、「社会的評価が低下したこと」「その投稿が公然と行われたこと」「投稿内容が被害者のことだと特定できること(同定可能性)」といった要件を満たす必要があります。

なお、ネット上の誹謗中傷は匿名で行われるのが通常ですが、犯人を特定するために事前に発信者情報開示請求を行う必要はありません。被告訴人(加害者)を「氏名不詳者」として刑事告訴することが可能です。

【注意点】 告訴で最も重要なのはスピードです。犯人を特定するための通信ログは、プロバイダにもよりますが概ね3ヶ月程度で消去されてしまうケースが多いため、投稿を発見したら、いかに迅速に行動するかが極めて重要です。

 

 

侮辱罪(刑法231条)

名誉毀損罪が「具体的な事実」を示して社会的評価を低下させる行為であるのに対し、具体的な事実を示さずに相手を侮辱する行為を罰するのが侮辱罪です。「バカ」「キモい」といった、相手を軽蔑する表現がこれにあたります。

侮辱罪もまた、親告罪です。そのため、侮辱的な書き込みがあったとしても、被害者が何もしなければ、警察が自発的に捜査し、検察官が起訴してくれるわけではありません。

 

 

詐欺罪(刑法246条)

詐欺の手口は巧妙化し、次から次へと新しい手法によって行われています。詐欺被害は後を絶ちません。

投資詐欺や仮想通貨詐欺、ロマンス詐欺などインターネットを介した見ず知らずの人に金銭を騙し取られたケースもあれば、知人に自動車売買の仲介を目的として購入資金を渡したが、結果的に自動車は納車されずにただお金だけを支払わされた挙句、その後音信不通になったというケースもあります。

詐欺罪は、被害者が申告しなければ捜査機関が被害の存在自体を把握することが困難なため、刑事告訴が捜査の端緒となることが多い犯罪です。

しかし、詐欺罪の立証は非常に難しいことで知られています。その最大の理由は、「最初から騙す意図があった(欺罔行為の故意)」ことを被害者側が立証しなければならない点にあります。

加害者の内心を、SNSのやり取りなどから直接証明できるケースは稀です。そのため、告訴を受理させるには、客観的な証拠をいかに集められるかが鍵となります。

詳細は関連記事で解説していますので、ご参照ください。

 

傷害罪(刑法204条)・暴行罪(刑法208条)

傷害罪及び暴行罪は、刑事告訴よりも被害届を提出するというイメージが強いかもしれません。確かに、被害届は、犯罪被害の事実を申告するものではあり、多くのケースで最初に提出されます(警察官から被害届を提出しますか?と聞かれることもあります。)。しかし、被害届提出後の捜査については、警察が必ずかつ積極的に動いてくれるとは限りません。被害の程度が軽微であったり、証拠が不十分であると捜査が立ち消えになることもあります。

一方で、刑事告訴を選択し、これが受理されれば捜査機関に捜査開始義務が生じます。犯人に対する処罰を求める意思表示として受け取ってくれるので、しっかりと捜査してもらえます。傷害罪・暴行罪について、より確実に捜査をしてもらうためには、刑事告訴が有効な手段となります。

 

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刑事告訴を成功させるために

当事務所に寄せられる刑事告訴の相談について、特に多い犯罪をご紹介しました。

当事務所では、これまでさまざまな犯罪被害に遭われた方に対して、刑事告訴の面からサポートしてきました。

本記事で紹介した犯罪以外でも、もちろん刑事告訴は可能です。しかし、単に「被害に遭った」と申告する被害届と比べ、刑事告訴が警察に受理されるためのハードルは非常に高いのが実情です。

受理の鍵を握るのは、被害事実を客観的に裏付ける証拠です。証拠がなければ、告訴が受理される可能性は極めて低いと言わざるを得ません。

  • 名誉毀損・侮辱罪:URL全体が写った投稿のスクリーンショット
  • 詐欺罪:相手とのやり取りの履歴(SNS、メール等)、送金を証明する資料(振込明細書等)
  • 傷害・暴行罪:怪我の写真、医師の診断書

これらの証拠をどれだけ的確に収集・整理できるかが、警察を動かすための重要なポイントになります。

当事務所では、これまで多くの犯罪に関して刑事告訴を受理させてきました。犯罪被害に遭い、刑事告訴をしようかお悩みの方は、当事務所までご相談ください。

 

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